著者
童 暁薇 TONG Xiaowei
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature
巻号頁・発行日
no.30, pp.37-51, 2020-03-18

女性を家父長制と軍事体制の権威的な構造における被支配者として認識するのが一般的であるが、女性はこの構造の中で権威に従属し、みずからの役割に従順にしばしば熱狂的に従うことによってまたこのシステムを支え、補完する。十五年戦争中、数多くの女性作家は中国戦地へ従軍慰問をした。戦地ルポで意図的に中国兵士の「敵」イメージを作り、戦争を宣揚して、前線と銃後一体の共同体を強める戦争協力者となった。一方で、「敵」作りにおいて、戦地のもう一面が遮断されてしまい、そのことによって彼女たちの内心の不安や良心的負担などは解消されることが可能になる。
著者
市川 真未 Mami ICHIKAWA
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.29, pp.59-67, 2019-03-18

本稿ではTwitter、ブログ、ドラマなどからマウンティングと意図された、またはそう捉えられた発話を取り上げ、その特徴をLeech(1983) のPoliteness principleを用いて考察した。その結果、自身の優位性を示すことに重点を置いた明示的なマウンティングから、見せかけのポライトネスを見せつつ暗示的に攻撃するものまで幅広く存在することが分かった。また、参与者B にとってデリケートな話題であると知りながらあえてその話題に触れる、ポライトな言語行動が期待されている場面で最大限に賞賛を行わない、感謝表明の代わりに不満表明をする、賞賛発話の中で否定語彙を使用するなどの特徴も見られた。
著者
大塚 望 OTSUKA Nozomi
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.31, pp.(11)-(29), 2021-03-18

「重複語(畳語)している/した」の意味・用法、機能を明らかにすべく、類義の「ぽい」と「らしい」との比較を行なった。意味的な共通点は「前接部の量、特徴や性質が強く現れていること」で、相違点は当該表現が「その数量、性質が極めて多い、大きいことを示す場合のみに使われる」という点であった。また、レアリティにも相違が見られ「ぽい」が反事実、「らしい」が事実を示すのが本来で、当該表現はその両方を示すことができる。そして、当該表現は「前接要素に含まれる『属性的な性質』を引っ張りだして『形容詞化する』動詞形式の語尾(形容詞機能語尾)」であり、その生産性は高いと言える。
著者
山本 美紀 Miki YAMAMOTO
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.28, pp.1-12, 2018-03-18

藤原定家は、歌の創作においては本歌取りを得意とし、多くの歌を残している。彼は本歌取りの重要を「本歌取りだと分かるように創作することである」とした。つまり、本歌は想起されるべきものであり、本歌取りの歌はその本歌の読みを内包して創作されているということになる。本歌取りと同じ創作手法を用いられているのが、「物語二百番歌合」である。物語歌を番えて成っているこの作品もまた、もとになった物語を想起することが想定されているかのような方法が採られており、それが歌を読む際のガイドとして機能しているかのようである。一方、本歌取りの歌も「物語二百番歌合」もその作品だけで読むことが可能であり、もとになった歌や読みを想起することが必須ということではない。想起しても想起しなくても、本歌取りの歌には本歌やその読みが、「物語二百番歌合」の歌にはその歌の収められていた物語内容が内包されている。本歌取りの歌を読むということ、「物語二百番歌合」を読むということはつまり、すでにそのもととなった歌と物語を読んでいるということなのだ。
著者
市川 真未 Mami ICHIKAWA
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.29, pp.59-67, 2019-03-18

本稿ではTwitter、ブログ、ドラマなどからマウンティングと意図された、またはそう捉えられた発話を取り上げ、その特徴をLeech(1983) のPoliteness principleを用いて考察した。その結果、自身の優位性を示すことに重点を置いた明示的なマウンティングから、見せかけのポライトネスを見せつつ暗示的に攻撃するものまで幅広く存在することが分かった。また、参与者B にとってデリケートな話題であると知りながらあえてその話題に触れる、ポライトな言語行動が期待されている場面で最大限に賞賛を行わない、感謝表明の代わりに不満表明をする、賞賛発話の中で否定語彙を使用するなどの特徴も見られた。
著者
徳永 淳 TOKUNAGA Atsushi
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.31, pp.20-31, 2021-03-18

昭和四十二(一九六七)年に発表された野坂昭如「子供は神の子」は、その表題を反転させた内容の小説である。妹の葬斂で大人たちからの賞讃を享受した小学校二年生の冽は、その晴れがましさを再度味わいたいがために「祖母」を死に至らしめる。しかし、大人たちは冽が「祖母」を死に至らしめたことなど知る由もなく、再び彼を優遇する。 本作は、子供を純粋無垢な存在として扱う大人たちを批判していると捉えられてきた。しかし、その批判もまた大人たちを主眼に置き、冽の内面に焦点をあてていない。 本稿では、大人たちの誤認を指摘した上で、冽の内面も分析し、「子供は神の子」を捉え直していこうと思う。
著者
守屋 三千代 MORIYA Michiyo
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature
巻号頁・発行日
no.30, pp.1-10, 2020-03-18

本稿は『星の王子さま』の和訳に現れた動詞「ナル」の意味・用法を分類し、英訳と対照するものである。原文がフランス語である『星の王子さま』を選んだのは、この原文および翻訳が筆者の主催する「ナル表現研究会」で行う通言語的研究の共通テキストであることに拠る。本稿で採用した『星の王子さま』では全50 例ほどの「ナル」を伴う用例が得られ、その英訳は変化表現・未来・状態表現・スル的表現、および義務表現に分かれる。このうち変化動詞があまり用いられない傾向と、未来形とスル的表現で訳される傾向が観察された。このことは日本語で時間幅をもってアナログ的に捉えられた事態が、英語では静的かつデジタル的に捉えられる傾向を示唆する。
著者
山下 由美子 Yumiko YAMASHITA
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.28, pp.57-71, 2018-03-18

学生のレポートにおける話し言葉の出現傾向を探るため,レポートの書き方に関する書籍で扱われる話し言葉を一覧表にまとめ,「学術文章作法Ⅰ」で課したレポートから出現数を調査した。最も多く出現したのは,接続表現の「そして」である。理由として,それを話し言葉と断定し,対応する書き言葉を明確に示しにくいことから,学生達は書き言葉であると認識し使用していると思われる。「じゃあ」「超」「~ちゃった」など口語としての話し言葉は全く出現していないため,ある程度は話し言葉と書き言葉の区別は身についていると言える。また,「ほとんど」「~と~」等,話し言葉と書き言葉の境界線があいまいなものも調査から明らかとなった。