著者
木谷 真紀子 Makiko Kitani
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 = Doshisha Kokubungaku (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.81, pp.327-339, 2014-11-20

三島由紀夫「弱法師」(「声」昭35・7)は、その題の示すとおり、謡曲「弱法師」を題材にとり、『近代能楽集』の八作目として発表された。本稿では、主人公が上野で物乞いをしていたこと、また、養親と実親が家庭裁判所における調停で俊徳をめぐり争っている点に着目。発表された昭和三十五年当時、〈上野の子〉のその後が注目されるような社会活動や、国際問題にまで発展した子どもの引渡請求の裁判があったことが、三島に着想を与えたことを指摘した。さらに、俊徳の終末観が否定されることが持つ意味を考察している。