著者
八木 智生 Tomoki Yagi
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 = Doshisha Kokubungaku (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.93, pp.49-60, 2020-12-20

壬生寺所蔵の縁起絵巻である、「壬生地蔵縁起絵巻」の第一巻第一話・第一巻第二話について、翻刻と注釈を行った。解題では、現状や錯簡などについて報告し、絵巻付属の極証文について再検討を加えるとともに、成立年代を論じた。
著者
加藤 直志 Tadashi Kato
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 = Doshisha Kokubungaku (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.94, pp.54-66, 2021-03-20

筆者は、日本近世文学会が行う出前授業に協力し、くずし字による古典教育の試みを行ってきた。その経験から、くずし字による古典教育が、学習者の興味・関心を引き出すのに有効であることがわかってきた。目下の課題は、教科書を中心とした日常の学習にもつながるようなくずし字の教材を開発することにある。本稿では、新しい教材の開発において求められることを探るため、国語科における古典教育の現状と課題について、小・中・高の校種別に分析した。

7 0 0 0 OA 妖怪名義小考

著者
久留島元 Hajime Kurushima
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 = Doshisha Kokubungaku (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.92, pp.148-159, 2020-03-20

本稿では現在の研究者が「妖怪」「怪異」にまつわる語彙として認識する「妖怪」「牛鬼」「付喪神」という三つの言葉(表現)に即して、古典資料の用例をふまえ、歴史的、社会的な背景により変化について分析を行った。これは小松和彦氏のいう妖怪の三領域(①現象、②存在、③造形)のうち、現象をともなわない存在についての考察であり、従来の妖怪研究に足りない文学的研究手法を提示するものである。
著者
小森 一輝 コモリ カズキ Komori Kazuki
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.90, pp.98-111, 2019-03

実践報告『羅生門』『枕草子』を通し、現代文・古文・漢文の関連性を明示的に指導する実践を行った。現代の日本語は、歴史的な日本語の上に成立したものである。ゆえに、現代文と古文・漢文との関連を自覚することは、国語の学習において重要な観点となる。しかし、国語教科書の単元は、現代文・古文・漢文に大別されており、これらの関連は必ずしも明記されていない。したがって、単元間の関連性や連続性を明示的に指導する必要がある。このような指導を行うにあたっては、従来、補助教材の発掘や作成が教員の負担となることが課題とされていた。稿者は、インターネットを用いて補助教材の発掘を行い、デジタルアーカイブが国語科の補助教材として有用であることを示した。
著者
佐藤 未央子 サトウ ミオコ Satoh Mioko
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.80, pp.38-52, 2014-03

谷崎の映画テクストをもとに、明治四十四年から大正五年に谷崎が受容した映画の概要と評価を確認し、いかなる要素が作品に抽出されているか分析した。映画の倒錯性、非現実性を好んだ谷崎は、映画タイトルを用いた修辞によって作品世界に同様の性質を付与していた。また谷崎の映画テクストにおいて特徴的な要素である俳優に対するまなざしは、この時期既に萌芽していた。更に、谷崎の映画受容とその記録からは、第一次世界大戦前におけるヨーロッパ映画の隆盛を看取できた。
著者
佐藤 未央子
出版者
同志社大学
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.72-85, 2011-12

谷崎潤一郎の映画体験は、作家論のなかで考察されてきたが、作品における映画的要素の分析は、解明の余地を残している。本稿は「アヹ・マリア」(大正十二年一月)に着目し、作中におけるセシル・B・デミル映画を、同時代資料を基に分析した。デミル映画は、主人公エモリの女性嗜好を変化させる機能を果たすことを検証した。これは谷崎の主題変化をも示唆しており、「アヹ・マリア」はその作品史において重要であると結論づけた。
著者
山田 和人 翻刻の会 Kazuhito Yamada Honkoku-no-Kai
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 = Doshisha Kokubungaku (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.92, pp.270-307, 2020-03-20

八百屋お七物の改作である『潤色江戸紫』(聖華書院、1907)を翻刻し、資料として紹介した。すでに『世話浄瑠璃大全』に所収されているが、翻字の誤りを修正し、節付けも補い、改めて底本に忠実な翻刻本文とした。廣田收教授退職記念号資料紹介翻刻の会: 同志社大学文学部教授山田和人と同志社大学文学部国文学科在学生(14名)
著者
佐藤 未央子 サトウ ミオコ Sato Mioko
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.82, pp.89-103, 2015-03

大正中期における谷崎潤一郎の映画受容を分析するにあたり、本稿では「痴人の愛」(大正十三年~大正十四年)に焦点を当てた。ナオミが二重写しにされたさまざまな女優とその評価や位置付けについて、関連資料を用いて具体的に考察し、小説における当時の文脈を復元した。また映画観客としてのナオミの主体性や、「痴人の愛」が映画界に対して二重に同時代性を持つことを論じた。