著者
内海 俊樹 Mergaert Peter Van de Velde Willem Alunni Benoit Zehirov Grigor 石原 寛信 Kondorosi Eva 九町 健一 東 四郎 阿部 美紀子
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.0189, 2009 (Released:2009-10-23)

マメ科植物と根粒菌の共生窒素固定系は、細胞内共生の最もよいモデルである。しかし、根粒菌を共生状態へと誘導・維持する植物側因子についての知見は乏しい。タルウマゴヤシやエンドウとミヤコグサやダイズの根粒内部の根粒菌(バクテロイド)は、形態的・生理的に大きく異なる。これは、細胞内共生の成立に関わる植物側の分子戦略の違いを反映しているものと考えられる。タルウマゴヤシ根粒中には、NCRと総称されるペプチドが存在する。4または6システイン残基を保存するディフェンシン様ペプチドであり、400を超える遺伝子ファミリーを構成している。いずれの遺伝子もミヤコグサゲノムには存在しておらず、その発現は、根粒特異的である。NCR001と084は、感染細胞に特異的に存在しており、合成NCR001と035をアルファルファ根粒菌に添加すると、バクテロイドに特徴的な変化を誘導した。NCR遺伝子を発現するミヤコグサ形質転換毛状根を誘導し、ミヤコグサ根粒菌を接種して根粒を着生させた。そのバクテロイドは、ミヤコグサ根粒菌であるにも関わらず、タルウマゴヤシ根粒中のバクテロイドと共通した特徴を呈していた。このことは、タルウマゴヤシ根粒では、NCRペプチド群の複合的な作用が、根粒菌のバクテロイド化とその維持に関与していることを示唆している。