著者
平 夏樹 岡田 留伊 寒川 萌香 Mitalo W. Oscar 矢野 親良 赤木 剛士 牛島 幸一郎 久保 康隆
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.359-366, 2022 (Released:2022-09-30)
参考文献数
34

スダチ果実の貯蔵・流通中の品質には緑色保持が重要な課題である.エディブルコーティングと1-MCPによる処理が10,15および20°C下でスダチ果実の品質保持にどのような影響を与えるのかを検討した.エディブルコーティングにはアニオン性材料とカチオン性材料を交互に積層したLBLコーティングとアニオン性材料とカチオン性材料を混合したイオンコンプレックス型(IC)コーティングを適用した.10°C貯蔵ではいずれの処理区でも15日までは緑色がよく保持された.15°Cおよび20°Cでは,LBLコーティング,ICコーティング(3層)処理は対照区よりエチレン生成と呼吸活性を抑制し,果皮の黄色化が進行したのはそれぞれ15,19日目以降でありICコーティング処理の方がより有効に寄与した.15°Cでは,1層ICコーティングでは7日目,2層では11日目から黄化が進行したが,3層コーティングはより効果的であった.一方,1-MCP処理はスダチ果実の黄化抑制にはほとんど効果がなくエチレン生成と呼吸活性を促進し,むしろ害作用を示す場合もあった.以上から,エディブルコーティングはガス透過性の制限によるエチレン生成と呼吸活性の抑制が密接に関与しスダチ果実の黄化を抑制すると考えられる.以上から,スダチの品質保持技術として,エディブルコーティングの実用化への可能性が示唆された.