著者
野原 美和子 Miwako NOHARA インドネシア日本語・日本文化センター日本語学校 Japanese Language and Culture Centre Indonesia
雑誌
世界の日本語教育. 日本語教育論集 = Japanese language education around the globe ; Japanese language education around the globe (ISSN:09172920)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.101-113, 1999-06-30

学習者の多様化に伴い、「人間中心主義」(縫部1991)を基調とする教師の学習支援的な役割が求められてきている。教師の学習支援的役割とは、偏に、「言語習得を促進するような学習環境を整えること」と言えるが、日本語教師が実際に教育現場でどのような活動を行なって環境整備をしているのかは推測の域を脱し得ていない。本稿は、言語習得を促進すると考えられる多数の要因の中から学習者の自発的な発話を採り上げ、それを導く教師の学習支援的言動について考える。 本稿では、先ず、学習者の自発的な発話が言語習得に与える影響を見、その後、自発的な発話の分類を行なった。自発的な発話は「積極的な自発的発話 (積極自発)」と「消極的な自発的発話(消極自発)」に分類されるが、学習者が抱いた問題の直接的な克服手段となる積極自発のみに焦点を当て、その内容と生じた状況・要因を授業分析を通 して特定した。それにより、積極自発を導いた教師の言動について考察を行なった。 総体的に見ると、積極自発の内容が何であれ、一方向的な説明等の状況よりインターアクションがあり交渉の行い易い状況を増やすことが積極自発の増加につながることが分かった。そのような環境を作り出していくことが、積極自発に関する教師の学習支援的言動であると言える。