- 著者
-
津田 敏隆
NARUKULL VenkateswaraRao
NARUKULL Venkateswara Rao
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
高度約60-150kmに位置する中間圏・熱圏下部領域(MLT:Mesosphere-Lower Themosphere)は大気流体から電離プラズマに基本特性が遷移する。MLT領域は地球環境の天井部であり、かつ惑星間宇宙との境界で、地球温暖化と太陽活動の影響を同時に受けている。本研究ではレーダー観測をもとに、MLT領域における風速の長期変動特性を研究した。MLT領域の中心高度(80-100km)における風速は、中波帯(MF)レーダーおよび流星レーダーで観測できる。本研究では、1992年よりインドネシアの政府研究機関(LAPAN)と共同で計5台のレーダー観測を継続してきた(ジャカルタ、西スマトラ・コトタバン、パプア・ビアク島の流星レーダー。西カリマンタン・ポンチアナと西ジャワ・パムンプクのMFレーダー)。また、南インドのティルネルベリのMFレーダー、および米国CoRAがハワイ・カウアイ島とララトンガで運用したMFレーダー、さらにオーストラリアのアデレイド大がクリスマス島で行ったMFレーダー観測データも入手した。1992年以降20年にわたる長期観測で蓄積された風速データを解析し、平均風の東西と南北成分の長期変動特性を解析した。東西風には半年周期振動が現れ、それが2-3年毎に極端に増大することが分かった。一方、南北風は規則的な1年周期があるが、その振幅が変動していた。さらに平均南北風に長期的トレンドがあり、かつ観測点による差違が認められた。これが、地球温暖化あるいは太陽活動11年周期の影響である可能性がある。また、短周期(20分~2時間)の大気重力波の強度が半年周期で変動することを明らかにした。一方、赤道域のMLT領域では東西風に半年周期振動が現れている。両者の相関が良い期間(2008-2010年)があり、大気波動を介した大気の力学的結合過程が示唆された。