- 著者
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菊池 三穂子
平山 謙二
NGUYEN Huy Tien
- 出版者
- 長崎大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2007
住血吸虫症の家畜向けワクチン等の開発により、住血吸虫感染のコントロールに寄与することを目的として本研究を推進した。放射線照射セルカリア感染によるワクチン効果が確かめられたミニブタの血清中の特異抗体に反応する住血吸虫抗原分画を同定し、新規ワクチン候補分子を虫卵及び虫体の可溶性抗原分画を二次元液体クロマトグラフィーシステム(2D-PF, BECKMAN Courter社)で分画し、抗体の反応性が認められる分画蛋白から、感染防御に関わるワクチン候補分子として4分画の配列を決定し、相同性検索の結果と分子量、アミノ酸配列から想定される蛋白の等電点(pI)の情報を元に4候補分子を決定した。これらの候補分子の虫卵、幼虫、成虫の各ステージにおける発現を確認し、虫卵ステージ以外でも発現が確認できたAAW27472.1、AXX25883.1、AWW27690.1について組み換え蛋白を作成し、放射線照射セルカリア感染ミニブタ血清が反応し、通常感染ミニブタ血清では反応が認められないことを確認した。この新たなワクチン候補蛋白のうち、AWW27472.1は23%程度の日本住血吸虫のカテプシンB・エンドベプチターゼ、26%のマンソン住血吸虫のカテプシンBとの相同性が認められた。AXX25883.1はsimilar to syntaxinと83%、Glutathion S-transeferase (GST)と23%の相同性を、AWW27690.1はDehydrogenase subunit1と46%の相同性を示すことが確認された。これらの候補分子の組み換え蛋白質で、マウスを免疫し抗血清を作成し培養ソーミュラ幼虫での発現部位について解析を行ったところ、AWW27472.1、AXX25883.1はソーミュラ表面に発現していることが推察された。これらの候補分子のワクチン効果を判定するための予備実験として、候補分子をpcDNA/V5/GW/D-TOPO(Invitologen)に挿入しDNAワクチンを作成し、Balb/Cマウス(1群13匹)に3回免疫後、血中抗体価を確認し日本住血吸虫セルカリアを40隻感染させた。感染後6週目に灌流し、成虫虫体を回収しワクチン効果を判定した。陰性対象群(Empty plasmid DNA)と比較した結果、AAW27690.1とAAW27472.1には、感染防御効果が認められなかったが、AXX25883.1は27%程度の回収虫体数の減少が認められた。今後、候補ワクチンの局在、効果に関わる免疫応答の本態等についてさらに詳細な検討を進めて研究を継続する。