著者
Nasu Nobuji
出版者
東京帝国大学地震研究所
雑誌
東京帝国大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.417-432, 1935-06-30

本論文には印度大地震の踏査報告に加へて本邦最近の地震學より此の地震を見て思ひ浮んだ事を記載した.殊に今囘の地震の原因に就いては世上に信じられてゐるヒマラヤ南麓の大断層の活動とのみ簡單に断定し得られざることを附記した.又被害分布と震原の遠近は必ずしも正しき關係を有せず,土地の振動性能に著しく支配されることを示し今囘の地震に於ける,モンギール市及びネパールの都市の如く甚だ飛び離れた地點に被害のあつたことも要するにその土地の振動性能に左右された結果であるとし,これ等の地點の眞下に夫々震原を假定するの不自然なることを述べた.
著者
Nasu Nobuji
出版者
東京帝国大学地震研究所
雑誌
東京帝国大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.225-228, 1942-03-30

土木工學の方面に於ても彈性波式地下探査法は有效であり,近年我國に於ては此方法が屡々實施されつゝある.殊に鐵道の諸工事の計畫に資せんがために此方法を實施した例は數多ある.最近幹線の計畫のため橋梁に關し,此の方法を以て沿線の主要なる河川の地質調査が行はれた.本論文中には東海道線中の主要なる河川,富士川,天龍川,大井川に架設さるべき橋梁基礎の地質調査の結果を擧げておいた.彈性波式探査法の屈折法を用ひ屈折波の走時曲線の解析により,彈性波の速度及び層の厚さを求めた.一般に河川の堆積層に於ては層の厚さ,及び彈性波の傳播速度が不規則であり.殊に最上部の層(多くの場合砂層)内に於ける傳播速度は場所によつて多いに異るため,走時曲線の解析に當つて誤差を生じるから,上層部の速度は綿密に調査し,且つ同一速度を有する砂層の區域をも注意して決定した.使用した器械は器械的光學的に地動を四萬倍に擴大する微動計である.富士川に於ては最上層内の速度600m/sec,第二層1600m/sec,第三層2300m/secであることを知る.第一,第二層は共に砂利層なるも後者は地下水面下にあるため其の彈性波の傳播速度が前者に比し大なる値を示した.第三層は上流に露出せる多孔質熔岩層に於て測定せる結果と其の傅播速度(2300m/sec)は完全に一致せる故,測定箇所の第三層も同一岩盤より成るものと推定す.天龍川に於ては走時曲線から第一層として速度300m/secを有するもの(乾燥せる砂利又は砂層),第二層は速度1300m/sec(水を含める砂利及び砂の互層)[或は1400m/sec(水を含める緩い砂層)又場所によつては1920m/sec(水を含める緊つた砂利層)]及び第三層は速度2210m/sec)洪積層砂,粘土及び砂利互層)より成ることを知る.大井川こ於て得た走時曲線は320m/sec(乾いた緩い砂利),700m/sec(層濕つた砂利層),1600m/sec(水を含める緊つた砂利層),2100m/sec(洪積層)及び3100m/sec(第三紀層)の五種の彈性波傳播速度を表はす直線又は折線より成る.以上各層の厚さはそれぞれ圖中に示してある.之を要するに最上層(速変300乃至600m/sec)の緩い砂或は砂利層は橋梁基礎としては十分なる地耐力を有するものとは言ひ難く,構造物の基礎はこれ等の層より深いところに設置すべきである.