著者
野口 康彦 櫻井 しのぶ Noguchi Yasuhiko Sakurai Shinobu
出版者
三重大学医学部看護学科
雑誌
三重看護学誌 (ISSN:13446983)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.9-17, 2009-03-20

本研究の目的は,わが国における親の離婚を経験した子どもの精神発達について検討を行い,理解を深めることである.親の離婚を経験した 18歳から 42歳までの 31 名の男女を対象として,半構造化面接を行い,そのデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析を行った.インフォーマント (情報の提供者) は大学生を含む青年期における独身者,そして既婚者を含む成人期にある人も対象とした. その結果,13 のカテゴリーと 60 の下位カテゴリーが抽出された.13 のカテゴリーは,【親の離婚の現前化】【傷つきと喪失の体験】【信頼と不信】【心理社会的サポート】【自立と抑うつ】【思春期の揺らぎ】【親密性への怖れ】【父親像の空白と希求】【新しい家族との葛藤と受け入れ】【異性との依存的な関係】【自己の回復と対峙】【親の離婚の受け入れ】【親の将来の心配】であった. 中心的なカテゴリーとなった他者との親密性の怖れは,親の離婚が子どもに与える心理的な影響の一つである.これは,親同士の争いやその期間の長さによる.さらに,結婚を考える時期になると,特に女性にとっては親がいないことが結婚のハンディ感となり,異性と親密になることの怖れとして表出されていることが理解された.