著者
田中 紀子 Noriko TANAKA
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学人文科学部論集 = Otemae journal of humanities (ISSN:13462105)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.A81-A92, 2003

Seven (1995) では現代の大都市を舞台として、残虐を極めた連続殺人事件が起きる。本稿では映画と小説の両方を取り上げ、そこに描かれた都市の諸相をおさえ、また小説のみに扱われている都市と田舎の対比に着目する。作品の主人公は、犯人捜査の任務に就いた二名の警察官の片方、生来都市で暮らしその暗黒面を知り尽くしているベテランの警部補である。彼と、彼とは対照的な人物である田舎町から移ってきたばかりの若手の刑事、その妻、そして殺人鬼の性格と生き方を明らかにし、彼らをめぐる人間関係を探ってゆく。さらに、重要な問題提起と考えられるErnest Hemingway の For Whom the Bell Tolls (1940) の中の一節、"The world is a fine place, and worth fighting for" がどのように作品に導入され、この一節が現代都市においてどのような意味を持ち、作品の結論にどのように反映されているのかを見てゆく。
著者
田中 紀子 Noriko TANAKA
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.123-137, 2011-03-31

Robert De Niroの主演、Martin Scorseseの演出により出来あがった映画『タクシー・ドライバー』(Taxi Driver)は1976年に公開された。兵士としてヴェトナム戦争に赴き、アメリカへ戻ってニューヨークでタクシー運転手の職に就くTravis Bickleを主人公とする作品で、孤独な彼の目を通して当時の都会にはびこるセックス、麻薬、暴力など様々な問題が描き出されている。実際には、Paul Schraderの脚本のセリフや場面設定、色の使用において幾つもの手直しが施されたのであるが、その結果さらにインパクトの強い仕上がりとなり、アメリカ1970年代半ばを代表する作品と称することのできる作品となっている。
著者
田中 紀子 Noriko TANAKA
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.9, pp.187-202, 2009-03-31

John Steinbeck の小説Of Mice and Men は、1930年代のカリフォルニアの農場を渡り歩く労働者二人の友情を中核とし、彼らの夢とその崩壊を描いた作品である。最初の映画化は1939年に行われ、それ自体の評価は良かったが、原作との違いには喜ばしくない点も見受けられる。それ以後1992年にはGary Sinise 監督・主演で新たに制作された映画は、概ね原作に忠実だと認められてはいるが、それでもいくつかの変更箇所が目につく。本稿では、小説のテーマである孤独、それを表わす人物であるCandy とCrooks とCurley の妻、さらにオープニングとエンディングの描き方についてこの1992年版の映画と比較し、原作者の意図と照らし合わせながら検討する。