著者
村越 望 矢田 明 ムラコシ ノゾミ ヤタ アキラ Nozomi MURAKOSHI Akira YATA
雑誌
南極資料
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1229-1239, 1962-04

1961年1月に,第3次越冬隊の気象部門の作業は,第4次越冬隊に引き継がれた.初めてレーウィンゾンデの器械が基地に運ばれ,その設置,調整に約1か月半を要し,3月1日より高層観測が始まり,12月末までに153回観測が行なわれた.過去3回の越冬における地上の月平均気温の最低は,いずれも9月に現われており,春から夏にかけて気温の急上昇を示している.これは成層圏の上層になるに従っても著しい.月平均値による年の振幅は,成層圏の50mbで45℃,地上で25℃に達した.一方対流圏では,各層とも振幅は小であって,10℃位であった.この成層圏の昇温は,上層から次第に下層に及んでいるのがみうけられた.月平均値から計算された昇温率は一般に上層程大きく,100mbで10~11月間に0.5℃/Day,50mbで9~10月間に0.6℃/Dayに達した.気球の破裂高度は冬期に著しく低くなる.この原因として,a)オゾン,酸素の酸化によるゴムの劣化,b)-30℃以下でゴムの張力の喪失,が考えられている.昭和基地においては,気球が-75℃の高度より昇ることは少なかった.これらのことから,ゴムが直接大気に触れないような考慮が払われたら,破裂高度はもっと高くなると思われる.第3次隊の経験では,ゴムを軽油につけて油の膜を作り,飛ばしたが,結果は良かったことが判明した.