著者
大形 里美 Ohgata Satomi
出版者
九州国際大学現代ビジネス学会
雑誌
九州国際大学国際・経済論集 = KIU Journal of Economics and International Studies (ISSN:24339253)
巻号頁・発行日
no.3, pp.47-78, 2019-03

インドネシアでは、イスラム文化圏としては珍しく、LGBT(Lesbian〈女性同性愛者〉、Gay〈男性同性愛者〉、Bisexual〈両性愛者〉、Transgender〈性別越境者〉の頭文字をとった単語で性的少数者の総称。)運動がこれまでかなり活発に行われてきた。とりわけ1998年の民主化以降、レズビアン運動が女性運動の一部に組み込まれたことによって、同国におけるLGBT運動は、外部に開かれた政治社会的運動として次第に可視化される存在となっていった。しかしそうした同国のLGBT運動の進展は、同時に同国内の保守派イスラム勢力による反LGBT運動を活発化させることとなり、近年、LGBT問題は急速に政治イシュー化している。LGBT脅威論が、マス・メディアやソーシャル・メディアなどを通じて社会一般に広められ、一般のイスラム教徒たちの間からもLGBTに対して明らかに否定的な反応が見られ始めている。現在同国には、西欧思想に影響を受けた世俗的なLGBT運動の潮流と、西欧的な人権意識を共有する多元主義的(リベラル派)イスラムの潮流が協力関係を築き、保守派イスラム勢力と対峙している構図がある。LGBT運動の進展は、同国のイスラム社会内部の亀裂を深めている。