著者
大形 里美 Ohgata Satomi
出版者
九州国際大学現代ビジネス学会
雑誌
九州国際大学 国際・経済論集 = KIU Journal of Economics and International Studies (ISSN:24339253)
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-36, 2020-10

ここ数十年の間にイスラム諸国を中心に「ハラール認証」が普及し、滞日・訪日イスラム教徒(ムスリム)たちは、飲食物の「ハラール性」にますます敏感になってきている。そして今、日本のフードビジネス業界には、ムスリムの食のタブーに対応したサービス「ハラール対応」への取り組みが今まで以上に求められている。ムスリム人口が少ない日本で「ハラール対応」を普及させるためには、本稿で取り上げる福岡のレストラン「極味や」による「ハラール対応」のような取り組みが不可欠である。また福岡マスジドによる「ハラール認証」無料発行の試みは、従来の「ハラール認証」制度が抱える問題点を認識し、新たな「ハラール認証」制度のあり方を模索するものであり注目される。
著者
大形 里美 Ohgata Satomi
出版者
九州国際大学現代ビジネス学会
雑誌
九州国際大学国際・経済論集 = KIU journal of economics and international studies (ISSN:24339253)
巻号頁・発行日
no.5, pp.21-54, 2020-03

インドネシアにおいて、1980年代に異宗婚(ムスリム〔イスラム教徒〕と非ムスリムの婚姻)を禁止するファトワーが出され、現状 異宗婚が不可能になっていることについて、異宗婚を禁止するファトワーが出されるに至った当時の社会的背景とファトワーに書かれた異宗婚禁止の理由を考察した。また人権擁護の観点から、異宗婚を認めるべきだと主張するリベラル派イスラム勢力による近年の議論と婚姻法改革をめぐる動向を分析した。かつて「1974年婚姻法」が成立するまで、そしてその後2000年頃までは婚姻法のあり方をめぐってイスラム派勢力と世俗派勢力が対立する構図が存在していたが、それ以降は、リベラル派イスラム勢力と世俗派勢力が共闘して保守派イスラム勢力と対峙する構図へと変化している。
著者
大形 里美 Ohgata Satomi
出版者
九州国際大学現代ビジネス学会
雑誌
九州国際大学国際・経済論集 = KIU Journal of Economics and International Studies (ISSN:24339253)
巻号頁・発行日
no.3, pp.47-78, 2019-03

インドネシアでは、イスラム文化圏としては珍しく、LGBT(Lesbian〈女性同性愛者〉、Gay〈男性同性愛者〉、Bisexual〈両性愛者〉、Transgender〈性別越境者〉の頭文字をとった単語で性的少数者の総称。)運動がこれまでかなり活発に行われてきた。とりわけ1998年の民主化以降、レズビアン運動が女性運動の一部に組み込まれたことによって、同国におけるLGBT運動は、外部に開かれた政治社会的運動として次第に可視化される存在となっていった。しかしそうした同国のLGBT運動の進展は、同時に同国内の保守派イスラム勢力による反LGBT運動を活発化させることとなり、近年、LGBT問題は急速に政治イシュー化している。LGBT脅威論が、マス・メディアやソーシャル・メディアなどを通じて社会一般に広められ、一般のイスラム教徒たちの間からもLGBTに対して明らかに否定的な反応が見られ始めている。現在同国には、西欧思想に影響を受けた世俗的なLGBT運動の潮流と、西欧的な人権意識を共有する多元主義的(リベラル派)イスラムの潮流が協力関係を築き、保守派イスラム勢力と対峙している構図がある。LGBT運動の進展は、同国のイスラム社会内部の亀裂を深めている。