著者
岡部 光明 OKABE Mitsuaki
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.21-58, 2009-03

本論文では,これまで日本経済の基調を形作る役割をしてきた日本企業を取り上げ,それをコーポレート・ガバナンス(企業統治)という視点にたって一連の論点を整理した。その結果(1)日本企業の行動を従来規律付けていた条件は1980 年代以降消滅した,(2)これに伴って企業のガバナンスが空白化し,それが1980 年代の資産価格バブルと1990 年代の長期不況の一要因になった,(3)近年は外国人による日本企業株式の取得増大などにより,株式市場の動向が企業の経営と行動を左右する傾向(英米型企業ガバナンスの色彩)が強まっている,(4)現在の日本企業の統治は,伝統的方式と英米的方式の混合型が増えるとともに統治スタイルの多様化が進んでいる,(5)今後日本企業が革新的な製品を生み出してゆくには,その統治方式を左右する金融環境ならびに法制度の整備が引き続き大きな課題である,などを主張している。