著者
藤嶋 亮 FUJISHIMA Ryo
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.95-99, 2010-03

本稿では,PES(及び社会主義インターナショナルSI)とルーマニアの左派政党の関係を中心に,「欧州政党Europarty」と新規加盟国の「姉妹政党」との対応関係の形成(グループ化)と,それが当該国の政党配置や政党競合に与えた影響について試論的に述べてみたい。【研究メモ/Research Memorandum】
著者
涌井 秀行
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.42, pp.1-18, 2012-10

1989年ベルリンの壁の崩壊・東ヨーロッパ諸国の資本主義への回帰と1991年12月のソ連邦の解体は,20世紀「社会主義」とは一体なんだったのか,という強烈な問いをわれわれに投げかけた。それに対する回答は様々であろうが,大きく分けて以下の2点にまとめられるであろう。①社会主義体制の生産調整システムである「計画」と分配の公平を担保する「社会的所有(国・公有)」は,経済制度として機能しない。なぜなら,計画の基礎となる経済計算はそもそも不可能である。同時に「社会的所有(国・公有)」は,社会発展を保証する生産性上昇の要にある労働のインセンティブを確保できない。②「社会主義」の基本理念は誤りではなかったが,実行に誤りがあった。スターリン・ブレジネフに象徴されるソ連共産党の官僚主義の硬直性が問題であった。ソ連は崩壊したが,思想的な基盤であるマルクス=レーニン主義は誤ってはいない。初期マルクスに立ち返って,検証すべきである。本稿はこうした議論を念頭に置きながら,ソ連の「社会主義」経済を実証分析し,崩壊の原因を論究しようとするものである。(1) 本稿は①と②のいずれの立場にも立っていない。論究は20世紀の「熱戦と冷戦」という特異な歴史状況を踏まえてなされなければならない。しかもソ連経済のマクロ的実体分析を踏まえてなされなければならない。(2) その結果,①ソ連の計画経済とは,軍事・宇宙=重化学工業化のための官僚的指令的計画であった。そこではコストは考慮される必要はなく,結果的に生産性の上昇は無視される。これは戦前日本の物動計画にもとづく軍事重化学工業化と同質であり,またアメリカの軍産複合体とも相似形をなしている。ここでの計画は軍事目標の達成に向けられ,有効に機能した。②科学=技術革命を基礎に置く1970年代以降の生産の革新(ME=情報革命)は工業生産の激変を引き出した。③その結果生みだされた安価で豊富な民生品は,「社会主義」社会を崩壊させた。1991年のソ連邦解体は,第2次世界大戦後の第2の「相対的安定期」ともいえる冷戦時代の幕を引き,唯一の超大国となったアメリカの単独行動主義の跳梁・跋扈時代の幕を開けたのである。
著者
岡部 光明
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.41, pp.83-95, 2012-03

プレゼンテーション用ソフトウエア「パワーポイント」は,各種組織の内外における報告や学会発表をはじめ,大学の授業などでも広く使われており,いまやコミュニケーションにおける強力かつ不可欠な道具になっている。しかし,その使い方に配慮を欠くことから効果的とはいえない使用例が大学生・大学院生の場合を含め少なくない。本稿は,パワーポイントを的確かつ効果的に使うため,最近の認知心理学やデザイン論の成果を援用するとともに,著者の経験やアイデアをも踏まえつつ実践的な指針を整理した論考である。研究メモ
著者
岡部 光明 OKABE Mitsuaki
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.21-58, 2009-03

本論文では,これまで日本経済の基調を形作る役割をしてきた日本企業を取り上げ,それをコーポレート・ガバナンス(企業統治)という視点にたって一連の論点を整理した。その結果(1)日本企業の行動を従来規律付けていた条件は1980 年代以降消滅した,(2)これに伴って企業のガバナンスが空白化し,それが1980 年代の資産価格バブルと1990 年代の長期不況の一要因になった,(3)近年は外国人による日本企業株式の取得増大などにより,株式市場の動向が企業の経営と行動を左右する傾向(英米型企業ガバナンスの色彩)が強まっている,(4)現在の日本企業の統治は,伝統的方式と英米的方式の混合型が増えるとともに統治スタイルの多様化が進んでいる,(5)今後日本企業が革新的な製品を生み出してゆくには,その統治方式を左右する金融環境ならびに法制度の整備が引き続き大きな課題である,などを主張している。
著者
涌井 秀行
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-22, 2011-10

新幹線,超高層ビル,自動車,そして半導体技術をはじめとするハイテク産業。東京都のGDPはオーストラリア一国に匹敵し,2009年までは,日本のGDPは世界第2位の規模であった。誰もが,日本が「高度に発達した資本主義国」であるということを疑わないだろう。だが戦後日本の経済は,前近代的な土地所有を基盤に発展したのである。欧州諸国は資本主義の成立過程(本源的蓄積)で,長い時間をかけて封建的土地所有を近代資本制的土地所有へと編制替えしてきた。農業をともかくも資本主義的農業・産業へとつくりかえたのである。しかし日本ではこの過程を経ることなく,またその暇もなく資本主義国へと転換せざるを得なかった。いや,むしろ戦前の「富国強兵」・急速な近代化の過程では,この半封建的土地所有・寄生地主制が近代化を促進したのである。戦後においても零細農地・農耕=宅地所有が「高度成長」を促進した。戦前も戦後も「前近代の存在がむしろ超近代を加速」(内田義彦)したのである。本稿は,戦後日本資本主義を規定した国内要因=基盤が「零細土地所有=零細農耕」を核とした「土地所有」にあり,その核心は零細農耕=稲作で陶冶された労働力にあることを論証し,この解決をとおして日本の変革を展望しようとする試論である。有効な制限原理,社会的な「公共財」としての性格を持たない,封建領主顔負けの土地所有こそ戦後日本の【基盤】であり,この【基盤】土地問題の解決なしには日本の変革と楊棄はあり得ないだろう。小稿は戦後日本資本主義を規定した国内要因=基盤が「零細土地所有=零細農耕」を核とする「土地所有」であることを論証し,「失われた20年」「閉塞感」打破の国民的立場に立った道筋を見出そうとする問題提起である。論文