著者
OKAZAWA Sachiyo
出版者
東京女子大学言語文化研究会
雑誌
東京女子大学言語文化研究 (ISSN:09187766)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.52-66, 0000

本論文は、第二言語学習者の発話におけるポーズとフィラーの特徴について調査を行ったものである。日本語を母語とし、英語を第二言語として学ぶ東京女子大学の学生32人を調査対象とした。被験者に二種類のセリフのないコマーシャルを見せ、そのストーリーを日本語、英語の両方で説明させるという実験を実施し、そのデータを元に量的および質的分析を試みた。その結果、ポーズの頻度に焦点を当てた場合は、日本語より英語の方が約2倍、ポーズが多いことが明らかになった。また、日本語の発話ではフィラーが、英語の発話では繰り返し表現が多く観察された。これは、被験者が日本語の発話で使われるフィラーと同じように、英語の発話において繰り返し表現を使用する可能性を示唆している。一方、日本語と英語の発話を比べた場合、繰り返し表現とフィラーにおいては明らかな量の違いが見られ、沈黙において違いは比較的少なく、訂正表現においては微量の違いしか見られなかった。訂正表現を除く、フィラー、繰り返し表現、沈黙には二言語間での相互作用が認められた。質的分析においては、ポーズの種類によってその特徴や機能も様々であることが明らかになった。以上の結果から、学習者が母語を話す場面と第二言語を話す場面では、ポーズとフィラーの特徴や機能は変化すると考えられる。今後の研究では、被験者の幅をより広げる必要がある。加えて、第二言語のスピーキング能力および使用するビデオのレベルの計測方法をより確実なものにすることが望まれる。