著者
初見 基 北島 玲子 OPHULSーKASHI ライノルト
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

科学研究費を受けて行なわれた4年間にわたる本研究の究極的な目的は、1989年の「ベルリンの壁崩壊」、そして90年の東西ドイツ統一に端的に現れた<世界の冷戦構造の解体>を背景に、1990年代のドイツの文化状況がどのような変化をこうむったか、知識人の発言及び発表作品に即して具体的に険証し、それを20世紀思想史の枠組みに位置づけることにあった。ただ、この4年問は、その研究のための準備段階と当初から構想されており、第一に据えられた具体的な課題は、基礎資料の収集・整理だった。そのなかではとくに、1990年以降刊行されたものを中心とする、新刊作品・研究書の充実化、雑誌・新聞等に掲載された論文や記事等の資料の収集、そして、コンピュータ・ネットワークを通じて流されている、主として90年代そして2000年代に入ってからのドイツの言論状況をめぐる資料収集が試みられた。こうしたもくろみの7割方は達成されたかと思うこの4年問の作業において、第二には、上記資料の整理・ファイリングが試みられた。ただ、量的に多いだけでなく、質的にも多岐に渡るため、いまだ充分な整理には到っていない。これは今後の課題として残ってしまった。また第三に、これまでも行なわれてきた共同研究が継続された。定例研究会が開かれた他、全国から研究者が集まるドイツ現代文学ゼミナール、オーストリア現代文学ゼミナールなどにも参加し、研究成果の検討がなされた。この成果の一端は、『成果報告書』にまとめられる他、それとは別途に、4年間の研究の最新成果が論考としてまとめられ、2002年度末に公表される予定である。そこにおいては、統一ドイツにおける、<民族>、<国家>、<性>等の<アイデンティティ>が、従来とではいかに変化しているか、という点についての考察がなされる。