- 著者
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大城 貞俊
OSHIRO SADATOSHI
- 出版者
- 琉球大学教育学部
- 雑誌
- 琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
- 巻号頁・発行日
- vol.81, pp.57-70, 2012-06
沖縄県が生んだ近代・現代を代表する詩人に山之口貘がいる。山之口貘は、戦前期の日本社会に残っていた負の遺産としての沖縄差別や貧困を、平易な日常語で詩の言葉として紡ぎ、ユーモアとペーソス溢れる詩世界を構築した。山之口貘の詩は、文科省検定の小学校、中学校、及び高等学校の国語科教科書で採用され紹介されている。また、沖縄県で作成された国語科副読本の中でも、代表的な詩教材として定着している。本論では、「差別」「偏見」「推敲」「言葉」「地域」「詩教材」「書くこと」などをキーワードに、山之口貘の詩を通して、地域教材がひらく可能性を考えてみた。山之口貘の詩には、言葉との格闘があり、同時に伝統的な言語文化の視点がある。また、「書くこと」の意義が具体的に伝わってくる。山之口貘の詩を学び、国語科教材としての授業展開を検討することは、グローバル社会における詩教材の可能性を考えることに大いに役立つものと思われる。