著者
OHRI Richa
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.26, pp.27-40, 2003-12

多言語化・多文化化していく日本社会の目指す言語的な方向性を築く手がかりを探ることを最終的な目標とし、本稿では、コミュニケーションストラテジーとして使われているスピーチレベルシフトを例に取って接触場面における共生日本語の一側面の解明を目指した。共生日本語とは、接触場面において参加者の協働の結果新たに生み出される「内容」を言語的に担うものであるとされている。本稿では、接触場面におけるスピーチレベルシフトが実現するものを「内容」と捉え、その「内容」の解明を試みた。会話データの分析の結果、接触場面における非母語話者のスピーチレベルシフトの要因として、(1)「アドレス」、(2)「心的態度」、(3)「力関係」の三つが示され、それぞれが、(1)「オンステージの明示」、(2)「心的距離の短縮」、(3)「母語話者への感謝の気持ちの表示」や「日本語・日本文化の教示の要請」を実現していることが分かった。共生日本語は、接触場面において定住型非母語話者がとるコミュニケーションストラテジーの側面を持つことから、母語話者のそれへの理解や受容していく姿勢が望まれることを指摘した。