著者
大城 和也 廣瀬 孝 Oshiro Kazuya Hirose Takashi 琉球銀行 琉球大学法文学部
出版者
沖縄地理学会
雑誌
沖縄地理 (ISSN:09166084)
巻号頁・発行日
no.15, pp.27-46, 2015-06

本研究では,沖縄島に分布する年代や岩相の異なる2 種類の石灰岩地域の湧水地点において約半年間にわたり水文観測を行なった.その結果,多孔質な第四紀琉球石灰岩地域にある志喜屋の湧泉と緻密な古期石灰岩地域にある具志堅大川との間には,降雨流出特性や水質に違いがみられた.基底時における単位面積あたりの流量は,古期石灰岩地域のほうが多く,カルシウムイオン濃度は琉球石灰岩のほうが高かった.また,降雨イベント時の流量変化をみると,具志堅大川では,台風接近時の300 mm を超えるような,暴風雨時にのみ流量に大きな変化が現われ,一方,志喜屋の湧泉では,数10 mm から数100 mm にいたるほとんどの降雨イベントにおいて降雨に速やかに対応した流量の増加がみられた.また,降雨イベント時における流量の減衰は,具志堅大川では,1 日程度と速やかであるのに対し,喜屋の湧泉では,定常時の流量に戻る期間は数日から数週間を要し,ピーク流量の値が大きいほどその時間は長かった.このような違いは,具志堅大川では,岩体の割れ目だけが主な水の通り道となっているのに対し,志喜屋の湧水では,琉球石灰岩自体の透水性が高いために,割れ目だけではなく岩体自体が風化層のような役割をしたためであるとともに,地質構造の違いによる地下水システムの違いによると考えられた.