著者
山崎 秀夫 香村 一夫 森脇 洋 加田平 賢史 廣瀬 孝太郎 井上 淳
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原発事故で放出され首都圏に沈着した放射性セシウムは東京湾に流入、蓄積していた。東京湾堆積物中の放射性セシウムの分布を解析し、首都圏における放射性セシウム汚染の動態を解明した。本研究では、東京湾の堆積物と水の放射性セシウム濃度の時空間分布を2011年8月から2016年7月までモニタリング調査した。東京湾に流入した放射性セシウムの大部分は首都圏北東部の高濃度汚染地帯が起源であり、そこから流出して東京湾奥部の旧江戸川河口域に沈積していた。現状では,放射性セシウムは東京湾中央部まではほとんど拡散していない。東京湾奥部河口域における放射性セシウムのインベントリーは事故以来、増加し続けている。
著者
高屋 康彦 廣瀬 孝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.389-401, 2009-09-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
39
被引用文献数
2 1

花崗岩を用いた二つの溶解実験の結果から,溶解特性に及ぼす要因について考察した.実験Aでは,固/液比を0.25,0.5および1に設定し,破砕した岩石試料を3種類の粒径(粗粒:32~45 mm;中粒:8~16 mm;細粒:1~2 mm)で振るい分けたもの200 gを用いた.実験Bでは,粉末試料1.0 gまたは直方体のブロック試料3.54×3.54×20.0 mm3を蒸留水50.0 mlと反応させた.その結果,溶解特性は表面積および固/液比の影響を大きく受け,その度合いは花崗岩では表面積の方が,花崗閃緑岩では固/液比の方が大きいことがわかった.花崗岩類が他の岩石に比べて溶けにくいことは,間隙率が小さいことと岩石中のアルカリ成分量が少ないことに起因すると考えられる.実験開始直後から初期の溶解特性は,有色鉱物の溶解特性の影響を受けやすい.花崗岩は破砕(粉砕)することにより,Fe,KおよびMgが溶出しやすくなるが,それは黒雲母の縁部からの顕著な溶解によると思われる.このことは,花崗岩の溶解特性が表面積の影響を大きく受けることの一因となっている.
著者
廣瀬 孝 菊地 徹 横澤 幸仁 内沢 秀光 櫛引 正剛 奈良岡 哲志
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.310-317, 2008 (Released:2009-03-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は,リサイクルが求められている廃ペットボトルとホタテ貝殻を複合した新たな素材の基本的特性評価を目的として行った。具体的内容として,1) 加熱によるホタテ貝殻含有有機基質やホタテ貝殻の物性変化の確認,2) 複合した際の成形品表面の観察や黄色度およびその強度性能について,一般的にフィラー (充填剤) として用いられている炭酸カルシウムを複合した材料との比較を行った。その結果,加熱によるホタテ貝殻含有有機基質の熱分解に起因するホタテ貝殻の黄色度変化は,炭酸カルシウムのそれよりも大きいことがわかった。また,廃ペットボトルとホタテ貝殻を複合した材料の表面は,ホタテ貝殻に存在する有機基質の熱分解ガスに起因する発泡痕等は見られなかったものの,炭酸カルシウムと複合したものと比較して黄色度の高い成形品となった。強度性能は,ホタテ貝殻を複合した方が炭酸カルシウムを複合したものよりも高い値を示した。これらの結果より,廃ペットボトルとホタテ貝殻の複合材料は,炭酸カルシウムと複合したものと比較して,黄色度は高いものの表面に発泡痕等がなく,強度性能は高いことが明らかになった。
著者
廣瀬 孝 大河内 萌
出版者
沖縄地理学会
雑誌
沖縄地理 (ISSN:09166084)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.45-54, 2021

本研究では,沖縄島本部山里に分布するコックピットカルストで地形測量や貫入試験を行った.その結果,本調査地のコックピットの底面は平坦で5 mを超える土層が存在した.土層厚は,コックピットの中央付近で厚く,周縁では薄かった.そのため,基盤形状は地表面形状と異なり中心にかけて低くなるような船底状で,また,谷線の影響がみられる形状も確認された.また,弱線の影響や水の集中による溶食の進行と土砂移動が示唆された.
著者
津田 涼汰 廣瀬 孝三郎 上原 盛久 松原 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.386-397, 2019
被引用文献数
1

<p> 沖縄島中南部に広がる島尻層群泥岩は,N値50以上を示す場合が多いことから良好な支持層としてみなされる反面,人工法面や自然斜面においては多くの崩壊・すべりが発生することで知られる.また,建設後約30年が経った本泥岩を主体とする道路法面では,法面保護工の損傷が多く見られ,経年に伴う岩石風化の可能性が指摘されている.本研究では,沖縄県中南部に位置する高速道路法面から得られた島尻層群泥岩の約30年間の強度変化を推定し,スレーキング試験,粉末X線回折分析及び微細構造観察によって,本法面の物理的・化学的な風化メカニズムについて検討した.結果として,法面保護工の損傷は,本泥岩に含まれる粘土鉱物の膨潤・溶解作用や黄鉄鉱の酸化作用等の物理的・化学的な風化作用に深く関わっていることが明らかとなった.</p>
著者
廣瀬 孝太郎 山崎 秀夫 長橋 良隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.11, pp.565-571, 2016-11-15 (Released:2017-02-20)
参考文献数
11
被引用文献数
4

猪苗代湖で掘削されたボーリングコア(INW212)の深度200~0cmを対象に,210Pb,134Cs,137Cs分析を行った.210Pb(ex)の分析結果から,深度39cm以深が約90年前以前に相当する可能性が示された.次に,134Csと137Csの分析結果から,深度29cmが1950年代初頭に相当すると推定された.さらに,これらの年代値と岩相層序について検討を行った結果,深度13.5~0cmの塊状の砂質シルトが2011年の東北地方太平洋沖地震に起因する堆積物であり,深度42~37.5cmの灰褐色粘土が1888年の磐梯山の崩壊に関連する堆積物であることが推定された.これらのイベントの深度と年代からINW2012コアの定常的な堆積速度を算出した結果,深度200.0~42.0cmにおいて1.0mm/yr,深度42.0~0cmにおいて約2.0mm/yrとなった.
著者
大城 和也 廣瀬 孝 Oshiro Kazuya Hirose Takashi 琉球銀行 琉球大学法文学部
出版者
沖縄地理学会
雑誌
沖縄地理 (ISSN:09166084)
巻号頁・発行日
no.15, pp.27-46, 2015-06

本研究では,沖縄島に分布する年代や岩相の異なる2 種類の石灰岩地域の湧水地点において約半年間にわたり水文観測を行なった.その結果,多孔質な第四紀琉球石灰岩地域にある志喜屋の湧泉と緻密な古期石灰岩地域にある具志堅大川との間には,降雨流出特性や水質に違いがみられた.基底時における単位面積あたりの流量は,古期石灰岩地域のほうが多く,カルシウムイオン濃度は琉球石灰岩のほうが高かった.また,降雨イベント時の流量変化をみると,具志堅大川では,台風接近時の300 mm を超えるような,暴風雨時にのみ流量に大きな変化が現われ,一方,志喜屋の湧泉では,数10 mm から数100 mm にいたるほとんどの降雨イベントにおいて降雨に速やかに対応した流量の増加がみられた.また,降雨イベント時における流量の減衰は,具志堅大川では,1 日程度と速やかであるのに対し,喜屋の湧泉では,定常時の流量に戻る期間は数日から数週間を要し,ピーク流量の値が大きいほどその時間は長かった.このような違いは,具志堅大川では,岩体の割れ目だけが主な水の通り道となっているのに対し,志喜屋の湧水では,琉球石灰岩自体の透水性が高いために,割れ目だけではなく岩体自体が風化層のような役割をしたためであるとともに,地質構造の違いによる地下水システムの違いによると考えられた.
著者
廣瀬 孝太郎 長橋 良隆 中澤 なおみ
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.157-173, 2014-06-01 (Released:2014-10-24)
参考文献数
43
被引用文献数
1 11

福島県猪苗代湖の湖心部付近において湖底堆積物(掘削深度37.13m, コア採取深度0~28.13 m;深度は湖底面からの深さ)を掘削した.この湖底堆積物コア(INW2012)を模式コアとして,猪苗代湖層と命名する.猪苗代湖層は,岩相層序により,下部・中部・上部に3分される.下部(深度37.13~26.60m)は,砂礫層と細礫や材片を含み上下方向に岩相変化の激しい中粒砂層や砂質シルト層からなる.中部(深度26.60~24.89m)は,全体を通じて上方に細粒化する極細粒砂~シルト層からなり,材片が散在する.上部(深度24.89~0.00m)は,主に明暗縞状に細互層する粘土からなり,それとは岩相から区別されるテフラ層や粘土~砂の薄層などの非定常時の堆積物を挟在する.下部・中部・上部は,それぞれ猪苗代湖形成前の河川成堆積物,猪苗代湖形成初期の湖成堆積物,現在と同程度の大水深環境下で形成された湖成堆積物と解釈される.挟在するテフラ層のうち6層は,層相と岩石学的検討に基づき,下位よりAT, As-K, To-Cu, Nm-NM, Hr-FA, Hr-FPに対比した.また,堆積物中の材片の14C年代値と岩相層序から,猪苗代湖が湖として成立したのは約42,000年前であり,猪苗代湖層上部の堆積速度は0.3?1.0mm/yrとなる.