- 著者
-
的崎 尚
PARK Jung-ha
PARK Jung-Ha
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2012
ヒトにおいては皮膚ケラチフサイトで約1ヶ月、赤血球で約3ケ月、骨細胞で約10年、脳神経細胞で数10年の寿命があると言われているが、最終分化後の個々の細胞の寿命がどのようにして決定されるかについては明らかとなっていない。本研究では、細胞寿命を決定する分子基盤の解明を目指し、特に、生体内でのターンオーバーが早く、この解析の糸口となり得ると考えられるマウス腸上皮細胞を研究対象として解析を進めている。平成24年度までの解析では・マウス回腸の腸上皮細胞はクリプトと呼ばれる領域で分裂した後に腸絨毛の先端まで移動し、分裂後約3-4日で消失していくことを確認すると同時に、これらの過程は腸内細菌によって制御される可能性を見出していた。そこで平成25年度は無菌マウスに腸内細菌を経口投与し、腸内細菌が腸上皮細胞のターンオーバーに与える影響について観察を行った。その結果、腸内細菌を投与したマウスでは無菌マウスと比べて腸上皮細胞の分裂数が増え、移動が速くなることが確認できた。また腸上皮細胞の三次元培養(オルガノイド培養)を行い、腸内細菌の構成成分や代謝物が腸上皮細胞にどのような影響を与えるかについて解析を行ったところ、腸内細菌の代謝物が腸上皮細胞の分裂に寄与している可能性を見出した。現在、どのような分子メカニズムで腸内細菌の代謝物が腸上皮細胞の分裂を制御しているのかについても解析を進めるとともに、マウスに腸内細菌の代謝物を与えた場合に腸上皮細胞のターンオーバーにどのような影響が出るかについても解析を進めている。