著者
遠藤 啓吾 PAUDYAL Bishnuhari
出版者
群馬大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

銅-64はPET検査に用いることのできるポジトロン核種として注目されている。通常抗体を用いたイメージングは抗体に錯体を標識し、放射性物質(銅-64など)を導入したもので直接法が普通であるが、今回、親和性向上を狙い、アビジン-ビオチン系を用いた新しい腫瘍イメージングを検討した。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は血管新生において重要な役割を果たしている。血管新隼はがんの形成や成長に必須であり、1-2mmを越えて腫瘍が育っためには栄養や酸素を供給する血管が必要である。VEGFに対するヒト化モノクローナル抗体であるベバシツマブ(アバスチン^<【○!R】>)と抗癌剤の併用による治療が開発されいる。本研究では血管内皮細胞増殖因子に対するモノクローナル抗体であるベバシズマブ(アバスチン)をビオチン標識し、ストレプトアビジン(Streptavidin)に1,4,7,10-tetraazacyclododecane-N,N,'N'',N'''-tetraacetic acid (DOTA)錯体を標識し、群馬大学にて製造した銅-64を導入した。ヒト由来大腸ガンであるHT29株を移植したヌードマウスにて評価した。前標的剤としてビオチン化ベバシズマブを投与し、24時間経過後、[^<64>Cu]-DOTA-ストレプトアビジンを投与し、その後、1、3、6、24時間後のPETイメージと体内分布を収集した。24時間後のPETイメージで腫瘍部位に良好な集積を有し、腫瘍部位以外では腎臓に分布が見られ、尿路排泄系によるクリアランスが期待される。本研究ではビオチン化ベバシズマブ、[^<64>Cu]-DOTA-ストレプトアビジンという二段階の手法を用いることにより、低バックグラウンド値かつ腫瘍部位の高集積化を実現し、有効性の高い優れたイメージング方法として大いに期待できる。