著者
笹木 圭子 PAWAR RADHESHYAM
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-11-10

有機金属構造体(MOF)は、中心金属とリンカーの組み合わせによって、高分子のような連続構造をとり、比表面積が高く、安定なだけではなく、中心金属やリンカーの特性により、さまざまな機能を付与でき、吸着材や触媒など機能性化学物質として、近年最も注目されている。なかでもガスフィルターとしての用途が最も実用化に近いといわれ、とくにCO2吸着剤としての開発研究が盛んである。しかし、本研究では、あまり研究例のない水溶液溶媒でのMOFの活用、とくに有害水溶性物質の光分解、光触媒機能による還元、陰イオンの吸着除去を目指して、水溶液中でのMOF合成法を開発および最適化し、合成したMOFの特性化、応用までを行った。ソルボサーマル法に代わる水溶媒での合成法の開発では、超音波法、マイクロ波法を試み、モジュレーターおよびリンカーの選択、モジュレーター量、、周波数、官能基の導入など300を超える実験条件をこなし、アプリケーションにおける反応効率の向上をめざした。さらに、MOFと粘土鉱物により複合体を合成し、可視光域で水溶液中での色素物質の分解、Cr(VI)の還元に機能する光触媒効率を評価した。本申請課題の中心であるMOF/粘土鉱物複合体による色素分子ローダミンBの光触媒分解では、MOFとしてZr6O4(OH)4(ABDC)6 (ABDC = 2-aminobenzene-1,4-dicarboxylic acid)を合成し、粘土として針状結晶のセピオライトを選び、複合材料の最適混合比を認めた。合成MOFは2.83 eV のバンドギャップをもつ可視光触媒で、光励起電子はセピオライトの導電帯に移り、スーパーオキシドラジカルを生成し、色素分子を酸化分解する機構を提唱した。このように、粘土鉱物は単なる支持体ではなく、光触媒反応の電子輸送にかかわっていることを示した。成果は国際学術誌4編にまとめられた。