著者
林 良雄 PILLAIYAR THANIGAIMALAI
出版者
東京薬科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

受入研究室におけるこれまでの研究から、SARSシステインプロテアーゼを阻害できる新しい阻害機構として、親電子性アリールケトン構造が有効であることを確認し、P1部位側鎖部にピロリドン型環状構造を有するアミノ酸誘導体およびカルボキシル基部分にチアゾール-2-ケトンを有するトリペプチド型化合物(Cbz-Val-Leu-amino-3-oxo-3-(thiazol-2-yl)propyl)pyrrolidin-2-one)が比較的良好なウイルスプロテアーゼ阻害活性を有することが解っていた。実用的創薬化合物の創製に向た阻害活性向上のために、平成23年度はP4部位およびアリールケトン部位の構造活性相関を進め、親水性構造をP4位に有し、10nMレベルの強い阻害活性(Ki)を示すトリペプチド誘導体を見いだすに至った。本年度においてはこの研究を更に進め、P3部位を除去した「ジペプチド型ペプチドミメティクス」の創製に新たに挑戦した。即ち、P3位Val残基の除去した。その結果、最初は酵素阻害活性が大きく低下したが、種々の誘導体を合成し、構造活性相関を検討したところ、阻害活性が徐々に向上し、先ずは中程度であるが興味深い酵素阻害活性を示すジペプチド型化合物を得ることに成功した。そこで、この化合物のP3位にあるN-arylglycine構造に注目し、構造最適化を行なった結果、酵素阻害活性(Ki)値が6nMという強力な阻害活性を示すジペプチドミメティック化合物を得た。標的プロテアーゼとのコンンピューターを用いたドッキングスタディーから、この化合物のIndole環窒素原子が、プロテアーゼのGlu166残基と新たな水素結合を形成することが示唆された。この相互作用は、化合物がプロテアーゼを強力に認識する上で有効であったために、阻害活性が大きく向上したものと考えられる。