著者
石井 誠士 Seishi ISHII 兵庫県立大学看護学部専門関連科目哲学系 Philosophy General Education College of Nursing Art and Science University of Hyogo
出版者
兵庫県立大学看護学部
雑誌
兵庫県立大学看護学部紀要 (ISSN:13498991)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-8, 2005

ドイツの医師アルベルト・フレンケルは、1900年頃ストロファンティン静脈注射治療を創始した人として有名である。ハイデルベルクとバーデンヴァイラーの2つの町に病院を開設したことや若い優秀な医師や看護師を養成したことも大きな功績である。 しかし、人々が彼において特に期待したものは、むしろ、彼の患者を受け容れる仕方、姿勢であった。善良さ、患者の訴えにひたすら耳傾ける姿勢、患者への自己の絶対的な依存性、今日、医師と患者の間のパートナーシップ関係について言われる受動的非対称性passive Asymmetrieこそが、フレンケルの医学の第1の特徴をなしている。だが、強調しなければならないことは、フレンケルが、ヴァイツゼッカーと同様に、病気への自然科学的なアプローチを軽んずるどころか、むしろ重視したことである。自然科学的研究と臨床、内在と超越とが、彼の場合には、一つに結びついている。ここにこそフレンケルの「大いなるスタイルの医学」の秘密があり、またその今日性がある。