著者
星 和彦 QIN LiQiang
出版者
山梨大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

乳製品は人間に役に立つ食べものである。一方、牛乳の消費と乳がんとの間に関係があるかどうかという議論が今まで続いている。乳がんは女性に最も多いがんといわれているが、牛乳と乳がんの関連性についての解明が重要である。本研究では、全部のラットに10mgのDMBAを与えて、腫瘍数と大きさが規準を満足したことを確認した後、ラットを以下の3群に分類した。1)成分無調整乳(milk)投与群;2)水道水(Negative control)投与群。この2群のラットは卵巣を摘除した。3)Positive control群。この群は手術操作を行ったが、卵巣は摘除しなかった。群分け10週後、ラットを屠殺した。腫瘍率、腫瘍平均数、平均重量、平均サイズについて、Negative control群に比べるとMilk群が有意に高くなった。注目すべきはMilk群の子宮重量(0.134±0.0329g)はnegative control群(0.107±0.020g)に比べ、有意に重くなったことである。血液中のホルモンを測ると、Milk群のprogesteronはNegative control群より有意に高くなった。また、細胞培養の実験を行った。MCF7細胞は10%charcoal-stripped牛胎児血清と1%抗生物質含むPRMI-1640で培養した。1×10^5の細胞はプレートに蒔いた。妊娠牛乳と非妊娠牛乳は遠心して、ウェー取った。0、0.5%、2%、5%のウェーを含む培地に細胞を48時間で培養した。そして、細胞数、生細胞数(MTT法)、細胞増殖(BrdU法)を測定した。一方、妊娠牛乳と非妊娠牛乳を取ったウェーをcharcoalで処理して、同じ方法で細胞数、細胞増殖を測定した。牛乳濃度の増加に伴って、細胞数、MTT、BrdUの値が高くなった。妊娠牛乳は非妊娠牛乳よりこの傾向が強かった。Charcoal処理した牛乳を用いると、妊娠牛乳、非妊娠牛乳共に、細胞への影響がほぼ失われた。この結果から、牛乳、特に妊娠乳牛由来の牛乳中に乳がん細胞成長、増殖を促進する因子が存在することが分かった。Charcoal処理すると、この因子が取り除かれた。この因子がエストロゲンかどうかについて検討するには、さらなる研究が必要である。