著者
端 晶彦 弓納持 勉 村田 晋一 近藤 哲夫 奈良 政敏 中澤 久美子 端 圭子 大森 真紀子 加藤 良平 星 和彦
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.126-133, 2006-03-22 (Released:2011-12-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

目的:分葉状頸管腺過形成(Lobular endocervical glandular hyperplasia; LEGH)と悪性腺腫(Minimaldeviation adenocarcinoma; MDA)の細胞学的・組織学的検討を行い, 術前細胞診の意義を検討した.方法:LEGH11例, MDA2例の13例の術前細胞診標本および摘出病理標本を用いて細胞学的・組織学的に検討した.結果: 細胞質の黄色調粘液は, LEGHとMDAとの鑑別には有用ではないが, 胃型形質発現の病変を検出するのには有用と考える. LEGHの細胞診では細胞集塊は平面的な出現形態を示し, 核の重積性はなく, 核小体は目立たない. MDAでは細胞集塊は立体感があり, 核の重積性, 核小体の大型化が認められる. 核内空胞(核内細胞質封入体: Intranuclear cytoplasmiac inclusion(INCI))の出現はLEGHに特徴的な所見である可能性がある. LEGHに腺癌を合併する症例では, LEGH特有の細胞に混じって腺癌が示唆される細胞が認められる場合がある.結論:細胞診検査はLEGHとMDAの検出に有用であり, また両者の鑑別にもきわめて重要である.
著者
星 和彦 QIN LiQiang
出版者
山梨大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

乳製品は人間に役に立つ食べものである。一方、牛乳の消費と乳がんとの間に関係があるかどうかという議論が今まで続いている。乳がんは女性に最も多いがんといわれているが、牛乳と乳がんの関連性についての解明が重要である。本研究では、全部のラットに10mgのDMBAを与えて、腫瘍数と大きさが規準を満足したことを確認した後、ラットを以下の3群に分類した。1)成分無調整乳(milk)投与群;2)水道水(Negative control)投与群。この2群のラットは卵巣を摘除した。3)Positive control群。この群は手術操作を行ったが、卵巣は摘除しなかった。群分け10週後、ラットを屠殺した。腫瘍率、腫瘍平均数、平均重量、平均サイズについて、Negative control群に比べるとMilk群が有意に高くなった。注目すべきはMilk群の子宮重量(0.134±0.0329g)はnegative control群(0.107±0.020g)に比べ、有意に重くなったことである。血液中のホルモンを測ると、Milk群のprogesteronはNegative control群より有意に高くなった。また、細胞培養の実験を行った。MCF7細胞は10%charcoal-stripped牛胎児血清と1%抗生物質含むPRMI-1640で培養した。1×10^5の細胞はプレートに蒔いた。妊娠牛乳と非妊娠牛乳は遠心して、ウェー取った。0、0.5%、2%、5%のウェーを含む培地に細胞を48時間で培養した。そして、細胞数、生細胞数(MTT法)、細胞増殖(BrdU法)を測定した。一方、妊娠牛乳と非妊娠牛乳を取ったウェーをcharcoalで処理して、同じ方法で細胞数、細胞増殖を測定した。牛乳濃度の増加に伴って、細胞数、MTT、BrdUの値が高くなった。妊娠牛乳は非妊娠牛乳よりこの傾向が強かった。Charcoal処理した牛乳を用いると、妊娠牛乳、非妊娠牛乳共に、細胞への影響がほぼ失われた。この結果から、牛乳、特に妊娠乳牛由来の牛乳中に乳がん細胞成長、増殖を促進する因子が存在することが分かった。Charcoal処理すると、この因子が取り除かれた。この因子がエストロゲンかどうかについて検討するには、さらなる研究が必要である。
著者
岩尾 憲明 須波 玲 大森 真紀子 樋口 浩二 伏見 美津恵 中嶋 ゆう子 深澤 宏子 小笠原 英理子 小室 真祐子 奥田 靖彦 平田 修司 星 和彦
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.486-491, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

分娩時大量出血が生じた際に希釈性凝固障害,あるいは播種性血管内凝固症候群の併発が止血を困難にしている場合が少なくない.また,分娩時出血は外科的縫合だけでは止血できない特殊性もある.このような状況では血液凝固因子を速やかに止血可能域の濃度に上昇させて止血を図ることが最も重要である.そのためには新鮮凍結血漿だけでは不充分であり,凝固因子の濃縮製剤であるクリオプレシピテートを使用して急速に凝固因子を補充することが必要である.当院産科において分娩時に大量出血を生じた14症例(平均出血量5,005.6ml)に対してクリオプレシピテートを投与したところ,全例でフィブリノゲン値の速やかな上昇を認め,止血を得ることができた.大量出血による希釈性凝固障害で高度の低フィブリノゲン血症を生じた産科危機的出血に対してはクリオプレシピテートを併用した輸血療法が極めて有用であると考えられる.
著者
星 和彦 星合 昊 斉藤 晃 桃野 耕太郎 京野 広一 対木 章 鈴木 雅洲
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.12, pp.2300-2304, 1983-12-01
被引用文献数
2

体外受精・胚移植時に採取されたヒト卵子を成熱度の高いと思われる順に卵子の外観と付着している卵丘細胞の状態から5型に分類した(GradeI〜V)。この卵子のGradeと体外受精における受精蜆初期発生状態との関連性を検討して以下のような成績を得た.胚移植時2〜8細胞期と正常に発育した卵子の割合は,GradeI〜IIの卵子では76%で,III〜Vの場合の22%に比べ明らかに高率であり,われわれの作成した分類法は成熟度をよく反映していた.GradeI〜II卵子の採取率は自然LHサージ後約26時間で64%,HCG注射後約36時間では88%であり,採卵時期として上記の設定時問は適切と思われた。また得られた卵子のGradeと卵胞直径・卵胞液量との間に相関はなかった。
著者
矢嶋 聰 東岩井 久 佐藤 章 渡辺 正昭 森 俊彦 星 和彦 米本 行範 鈴木 雅洲
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1657-1663, 1978-12-01
被引用文献数
1

(1) 宮城県の子宮頚癌住民検診は,昭和50年末までに,のべ受診者数が553,954人に達した.この間に発見された浸潤癌および上皮内癌患者数はそれぞれ707人,および701人であつた. (2) 昭和50年の年令階層別受診者は,40才台が最も高く対象婦人の27.4%であつた.高年令層は頚癌のhigh risk groupであるにもかゝわらず受診率はきわめて低い. (3) 頚癌の継続検診を行なうと,上皮内癌,浸潤癌の発見率は年度の推移にしたがつて減少するが,高度異型上皮の発見率はほゞ一定である. (4) 昭和40年,45年および50年のCytology Activity indexは,それぞれ60.0, 116.7および193.2であつた. (5) 検診車法による受診者の上皮内癌および浸潤癌のprevalence rateは,昭和45年および50年でそれぞれ192.8, 99.9,および102.3, 71.5であり,両者とも検診の継続により減少した. (6) 宮城日母登録方式による上皮内癌prevalence rateは,昭和45年,50年でそれぞれ213.3および205.1であり年度の推移による変化はほとんど認められなかつた.この方式による浸潤癌のprevalence rateはそれぞれ769.2および636.0であつた. (7) 昭和44年〜47年における宮城県の子宮頚浸潤癌incidence rate(年間)は32.9であつた. (8) 県下の子宮癌死亡率は5.0(10万人当り)から4.0程度であり,速度はおとろえたとはいえ,減少を続けているのが近年の傾向である.