- 著者
-
Rüdiger Riehl
- 出版者
- The Ichthyological Society of Japan
- 雑誌
- 魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.4, pp.374-380, 1991-02-28 (Released:2011-02-23)
- 参考文献数
- 27
Heterandria formosaの雄化した雌1尾を初めて記載する.全長は28mmで, 雄成魚 (17-20mm) と雌成魚 (35―40mm) の中間である.長さ約5mmの雄化した轡鰭が明らかである.鰭条IとIIは正常雄にみられるように縮小している.鰭条III-Vは伸長して発達中の交接肢の特徴をみせる.残りの鰭条VI-VIIIは “正常鰭” に相当する形状をみせる.正常には鰭条IVの前枝から派生する属特異的な鈎状部と鰭条IVの後枝に生ずる基部鋸歯状突起は, 雄化した臀鰭にはない.妊娠した正常雌にある妊娠斑点もみられない.H. formosaの雌における雄化臀鰭の形成の原因はまだ不明である.雄化した雌は雌雄同体型の生殖腺を持っており, その生殖腺には卵巣組織域と精巣組織域が容易に識別される.卵巣組織域がより大きい.この生殖腺の卵母細胞は薄い卵膜を持ち卵黄形成の段階にある.精子とセルトリ細胞が存在する精巣組織域は卵巣組織全体に分布している.生殖腺内に成熟卵母細胞と成熟精子の双方が同時に出現するというこの様式の雌雄同体現象は魚類では注目に値するものである.