- 著者
-
REMIJN Gerard Bastiaan
上田 和夫
豊岡 哲郎
- 出版者
- 九州大学大学院芸術工学研究院紀要『芸術工学研究』編集委員会
- 雑誌
- 芸術工学研究 : 九州大学大学院芸術工学研究院紀要 (ISSN:13490915)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, pp.65-70, 2011
標準的な英語において, 名詞の複数形は/s/や/z/といった語音で表現される。これらは通常, 強勢が置かれず, 雑音のような音の性質を持っている。このことにより, (雑音の多い)学習環境においては, 複数形語尾の知覚が困難になる可能性がある。特に, 第二言語として英語を学習する場合, かつ, 学習者の母語では名詞の複数形語尾変化があまり行われない場合には, このことが顕著となる可能性がある。しかし, 英語の複数形を表す語音の知覚については, これまでにあまり研究が行われていない。そこで, 若年成人の日本語母語話者に, 英語複数形の/s/および/z/を聞き取らせ, 書き取らせる研究を実施した。その結果, 書き取られた単語全体のおよそ12%で複数形の/s/または/z/が書き取られていなかった。また, 無性の/s/は, 有声の/z/よりも, 有意に欠落することが多かった。この結果をより確かなものにするためには, 今後, 信号(/s/および/z/)の強調, および/または(背景)雑音レベルの系統的な操作を行う研究が必要である。