- 著者
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中村 滋延
- 出版者
- 九州大学大学院芸術工学研究院
- 雑誌
- 芸術工学研究 (ISSN:13490915)
- 巻号頁・発行日
- no.2, pp.25-36, 2004-11-25
ビデオソフトがDVD 化されていることと関連しているのかどうか不明であるが,ここわずか数年の間にアート・アニメーションの名作がDVD ビデオとして次々と発売されている。短編が主流であるアート・アニメーションにおいては,ランダムアクセス可能なDVD ビデオはたしかに扱いやすいメディアであろう。アート・アニメーション先進国と言われるチェコや旧ソ連,カナダの名作を質の良い画像で, しかも手近で見ることができるのはまことにありがたい。アート・アニメーションの定義はあいまいである。アニメーション映画の中で,ディスニーや宮崎駿などに代表される商業映画アニメーションとは対極にあるものを指す。短編が主流で, 多くの作品が上映時間10 分から20分程度である。商品としての採算を無視して作られることが多いので,芸術表現上の新しい試みが行いやすく,アートとしての表現欲を満たすことのできる領域である。芸術表現上の新しい試みは映像表現のみならず,音表現においてもなされている。2002 年から箪者が収集した多くのDVD ビデオの中から,音表現において新しい試みがなされていると思われるアート・アニメーション作品を4つ取り上げて,それぞれについて音表現に焦点をしぼって論述する。作品名は; / 1. 久里洋二《G線上の悲劇》1969, 『久里洋二作品集』Pionner, PIBA-3036 / 2. コ・ホードマン《シュッシュッ》1972, 『NFB FilmWorks Co Hoedeman』Pioneer, PIBA-1343 / 3. ヤン・シュヴァンクマイエル《男のゲーム》1988,『シュヴァンクマイエルの不思議な世界』iMAGE FORUM VIDEO, DAD99001 / 4. イジー・バルタ《見捨てられたクラブ》1989, 『闇と光のラビリンス』iMAGE FORUM VIDEO, DAD0104 / であり,いずれもアート・アニメーションとしてよく知られた作品である。それぞれの作品についての論述の項目は以下のとおりである: / 1. 基本情報 / 2. 論述の焦点 / 3. 作品の分析 / 4. 分析結果に基づく考察 / 5. 考察のまとめ / なお,それぞれの評論は独立したものであり,本稿はいわば「評論集」である。