著者
ROSER Barry・P
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本州、北海道、韓国の主要なテレーンで採取した砂岩-泥岩試料は全岩化学組成の上から顕著なコントラストを示す。本州では、四万十-丹波、三波川、黒瀬川テレーンにおける砂岩-泥岩試料は主・微量成分、希土類元素に関して、比較的分化の進んだCIAまたはACM堆積物の特徴を示す。コンドライトで規格化したREEパターンはLa_N/Yb_N比平均値はそれぞれ10.4-10.9、8.2、9.2であり、また、Gd_N/Yb_N比はそれぞれ1.72-1.33、1.45、1.71と違いがある。低いGd_N/Yb_N比はジルコンやガーネットの濃集を示している。負のEu異常はこれら3テレーンのすべてに共通して認められる(Eu/Eu*平均値は0.77-0.73,0.63,0.79)。渡島半島テレーン(北海道)の珪質岩に於ける高いLa_N/Yb_N比(平均値11.00)とより大きな負のEu異常(Eu/Eu*=0.64)は比較的成熟した起源物質を示している。蝦夷層群下部イドンナップ帯岩石における低いLa_N/Yb_N比とEu/Eu*比(平均値9.74と0.69)は苦鉄質物質のより大きな影響を反映して、より上位に向かって減少(6.76と0.78)していく。Gyeongsang累層群(韓国)における平均的なLa_N/Yb_N比(13.5)は、この累層群に対比される関門層群中のもの(8.8)に比べ、より大きいが、Eu/Eu*比平均値は類似している。四万十、三波川、大島、蝦夷イドンナップテレーンのNdモデル年代は著しく異なる。四万十帯のモデル年代は、大部分が1.0-1.4Gaにはあるものの、0.74から1.6Gaの幅を示し、領家と肥後テレーンの起源物質の中間的な年代値となっている。二つの三波川結晶片岩試料は1.04と1.2Gaという類似したモデル年代を示し、四万十帯プロトリス、つまり源岩の共通性の可能性を示唆する。渡島半島テレーンのモデル年代は著しく古く(1.44-1.85Ga)、Yangtzeクラトンの年代と類似し、おそらくそれらを起源とする。下部蝦夷イドンナップテレーンのモデル年代は、渡島半島テレーンものより若く(1.05-1.31Ga)、上部蝦夷イドンナップテレーンにおいてはさらに若く(0.71-0.93Ga),このことはおそらく付加体内においてリサイクルした海洋地殻の影響が反映されているのであろう。造山帯としての日本列島の平均的な上部地殻組成(JOAUC)に対する元素組成規格値は、同じテレーンにおいて、REEやHFSEは良く類似しているにもかかわらず、ある種の元素(例えば、Fe,Mn,Mg,Ca,P,Sc,V,Cr,Niなど)は負の異常を示す。元素の枯渇は渡島半島、蝦夷イドンナップ、四万十テレーンにおいてもっとも顕著であり、また、泥岩に比べ砂岩で著しい。この異常はJOAUC平均値の中で、ある種の元素については修正しなくてはならないであろうことを示している。