著者
SCHWARZENEGGER C.M.
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究によって次の点が明らかとなった。1 宗教と犯罪の関係: 非常に宗教性の強い国民が多い国々では犯罪率が高く、日本のように比較的宗教性が弱い国々では犯罪率が低い。2 犯罪の惹起要因: 社会的な結びつきの弱さと歪んだ価値観が、犯罪行為の基本的な要素である。社会から隔絶された過激なカルト(オウム真理教、太陽の寺院、ワコ)では、信者は、両親、友人、同僚のような他のコントロール機関とのコンタクトを絶たれ、カリスマ的な宗教上の指導者による「真理の教え」という歪んだ価値観が教え込まれた。こうしたことが、信者の犯罪行為へとつながって行った。3 日本の宗教シーンの特性: 日本の宗教シーンの特徴として次の点を挙げうる。すなわち、(1)非常に多様な宗教団体があるということ、(2)欧州や米国の一神教とは異なり諸々の宗教が混然と融合している宗教観、(3)宗教的寛容さ、(4)宗教性の弱さ、である。日本においては、伝統的な信仰上の流派である神道や仏教は、多くの人々にとって精神的な支柱としての意味を失ってしまっている。精神的な指導を得たいという欲求を満たしているのは、多くの新興宗教であり、新興宗教は、とりわけ若く、精神的に不安定な人々の間で流行している。4 国家によるカルトのコントロールのあり方: 今後、カルトに対する国家のコントロールは強化されることになるになろう。しかし、宗教の自由は守られなければならないので、個々の信者が入信することを妨げることはできない。そこで、ヨーロッパやアメリカの例を参考に、当局が、布教の方法や信者の扱いを適切に審査し、国民に警告を発するシステムが検討されるべきである。5 カルトの経済行為: カルトが企業を創設し、製品を製造している場合には、宗派は通常の企業と同様に扱われるべきである。この点では、税の減免措置は、廃止されるべきである。