- 著者
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吉井 秀夫
SEONG JeongYong
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2003
本年度は、研究代表者の吉井の指導の下、研究分担者が日本および中国における資料の実見調査を精力的におこなった。中国での調査については、5月に遼寧省の朝陽・瀋陽周辺の鮮卑系考古資料を見学し、この地域の騎馬に関わる文化が、4・5世紀の百済の馬具とどのような関係にあるのかについて検討をおこなった。日本での調査については、これまで研究分担者が訪れる機会のなかった中部・関東地方の資料を集中的に調査することにした。5月には、大室古墳群に代表される、長野市周辺の渡来系考古資料の見学と検討をおこなった。また岡山県でおこなわれた、古代山城である鬼の城についてのシンポジウムに参加して、百済山城との関係を議論し、城門を復元中の鬼の城の現地を見学した。7月には福井県・東京都・群馬県・埼玉県・千葉県で資料調査を行った。福井県では、福井県立郷土若狭歴史民俗博物館などを訪れ、若狭を中心とする渡来系考古資料の実見調査をおこなった。東京都では、東京国立博物館および宮内庁書陵部が所蔵している日本各地出土の渡来系考古資料(主に馬具類)を集中的に見学した。群馬県・埼玉県・千葉県では、群馬県観音山古墳・観音塚古墳、埼玉県埼玉古墳群、千葉県金鈴塚古墳など、関東における環頭大刀や青銅製容器が多量に出土した古墳の現地を訪れ、また出土資料を見学して、百済との関係について検討をおこなった。個人的な事情から、今年度の研究費による調査を中断せざるをえなくなったが、昨年度の調査と含め、日本および中国において、百済との関係が深い考古資料の概要を大まかに把握することができたのが最大の成果であった。この成果をもとに今後も、引き続き百済の対外交渉について、東アジア的な視角から研究を進めていきたい。