著者
堀川 諭 Satoru Horikawa
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学社会文化学部論集 = Otemae journal of socio-cultural studies (ISSN:13462113)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.21-33, 2000-03-25

日々報道される少年事件の背景はさまざまであり、一様に論ずることができないことはいうまでもない。また、少年法の規制の中でわれわれの知りうる情報はきわめて限られたものであるから、個々の事件をあれこれ論ずることには慎議でなければならない。しかし、こうした少年事件にしばしば衝動的で短絡的なクレッチマーのいう「短絡反応」(short circuit reaction) ともいえる心珊機制がみられることも事実である。そこで、この小文では、少年による短絡反応の事例と考えられるニつの有名な事件、一つは、事件後三百数十年もの問語り継がれてきた「八百燦お七」の物語、いま一つは、昨今の短絡的な少年事件の現代的嚆矢ともいえる高島忠夫氏氏長男の「道夫ちゃん事件」を取り上げ、それに若干の精神病理学的な検討を加えた。いみじくも両者はともに17 歳の少年による犯行であり、前者はわが国を代表する古典作品として怯承され、後者は報道規制の緩やかであった時代の、それゆえ比較的詳細に事件の本質に迫ることのできる事件として興味深いものがある。