著者
志村 恵 Shimura Megumi
出版者
金沢大学国際機構紀要編集委員会
雑誌
金沢大学国際機構紀要 = Research Bulletin, Organization of Global Affairs Kanazawa University (ISSN:2434852X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.25-38, 2021-03

ドイツでは統合コース(Integrationskurs)(語学コース(Sprachkurs)と社会・政治・歴史・文化についてのオリエンテーションコース(Orientierungskurs)から成る)を実施している。このオリエンテーションコースは,規定(Verordnung über die Durchführung von Integrationskursen für Ausländer und Spätaussiedler)やカリキュラム(Curriculum für einen bundesweiten Orientierungskurs)に基づいて作られた認定教科書を使って「, ドイツの国家体制についての理解を呼び覚ます」「ドイツについての肯定的評価を涵養する」「居住者や市民としての権利や義務についての知識を伝える」「自分で情報を得ていく能力を形成する」「社会生活に関与していく能力を形成する」「異文化理解の能力を獲得する」ことなどを目的として実施されている。 本論文では,オリエンテーションコースの教科書と日本の外国人技能実習生用の『日本の生活案内』(Guide to Life in Japan)を比較することで,オリエンテーションコースの特徴を際立たせたい。こうした社会・政治・歴史・文化への理解と多文化への寛容を養成するドイツを含む各国の取り組みは,今後定住外国人市民が増大すると思われている日本においても,われわれに大きな示唆を示している。