著者
小田桐 忍 オダギリ シノブ Shinobu Odagiri
雑誌
実践女子短期大学紀要
巻号頁・発行日
vol.32, pp.49-59, 2011-03-20

法哲学者は教育学者の仕事に不案内である。従って、筆者の尾高朝雄をめぐる評価(以下「尾高論」という)も、これまでは法哲学者としての側面のみに注目し、検討を進めてきた観を否めない。ところが、教育学の世界に目を転ずると、そこには、文部省著作教科書『民主主義』の筆者に携わった尾高を取り上げる、もうひとつの尾高論が存在したのである。小論の目的は、そうした理論状況を受けて、一方に与して、他方を排するという方法に陥ることなく、尾高という学究について総合的立体的に考察することの意義を明確にすると同時に、これからの尾高論の進むべき途を開拓することに存する。