著者
新谷 龍太朗 Shintani Ryutaro シンタニ リュウタロウ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
no.16, pp.147-161, 2011-03-31

本稿は、格差是正の制度として導入された総合選抜制度を学力・学習意欲格差の文脈から捉えなおし、特に進学アスピレーションと文化資本の関係からその影響をログリニア・モデルを用いて検証する。用いるのは中澤(2008)「進学アスピレーションに対するトラッキングと入試制度の影響」(東洋大学社会学部紀要 第46- 2 号)のデータであり、本稿は同データをSSJDAより使用の許可を受けた二次分析の位置づけとなる。中澤はログリニアモデルを用いた分析を行い、総合選抜制度のもとでは進学アスピレーションと中3 時成績の関連が比較的弱まることを示し、総合選抜制度には生徒のやる気を維持し中3 時の成績を越える進学成果を生む可能性があることを指摘した。本稿では、この結果を家庭階層の観点から再考し、中3 時成績に代えて文化資本を変数として同様のログリニアモデルによる分析を行い、文化資本と進学アスピレーションの関連が中澤の分析同様に弱まるのかを検証した。その結果、文化資本として用いた指標に限界はあるが、総合選抜制度のもとでは進学アスピレーションと文化資本の関連が強まり、むしろ文化資本による進学意欲格差が生まれる可能性を指摘した。また、特に文化資本の中間層において進学意欲が低下する傾向にあることを示した。
著者
岡邑 衛 上田 勝江 新谷 龍太朗 オカムラ エイ ウエダ カツエ シンタニ リュウタロウ Okamura Ei Ueda Katsue Shintani Ryutaro
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.97-110, 2014-03-31

本稿では、アメリカ合衆国における「共通コア州スタンダーズ」の現場への浸透具合とその課題をフィールドワークを通して探ることによって、同国の学力格差是正政策の実現過程とその課題を明らかにする。フィールドワークの結果、コミュニティと緊密な関係を構築している学校においては、保護者、教員が一体となって独自の学校文化を守ることで「共通コア州スタンダーズ」の影響を受けていない様子が見られた一方、民間組織がイニシアティブをとる教育機関と関係のある学校には、一定程度の影響が現れていた。すなわち、共通コア州スタンダーズが実践に影響を与える度合いは、官民連携の度合いと比例関係にあるという仮説が考えられる。だが、「共通コア州スタンダーズ」に適応した各学校の取り組みが校長の強いリーダーシップに依存している場合、その継続性や発展性は同じ志を持つ他校とのネットワークがあるかどうかにかかっていること、民間組織の教育支援機能が全ての公立学校を支援できるかという規模の問題を指摘することができる。