著者
岡邑 衛 上田 勝江 新谷 龍太朗 オカムラ エイ ウエダ カツエ シンタニ リュウタロウ Okamura Ei Ueda Katsue Shintani Ryutaro
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.97-110, 2014-03-31

本稿では、アメリカ合衆国における「共通コア州スタンダーズ」の現場への浸透具合とその課題をフィールドワークを通して探ることによって、同国の学力格差是正政策の実現過程とその課題を明らかにする。フィールドワークの結果、コミュニティと緊密な関係を構築している学校においては、保護者、教員が一体となって独自の学校文化を守ることで「共通コア州スタンダーズ」の影響を受けていない様子が見られた一方、民間組織がイニシアティブをとる教育機関と関係のある学校には、一定程度の影響が現れていた。すなわち、共通コア州スタンダーズが実践に影響を与える度合いは、官民連携の度合いと比例関係にあるという仮説が考えられる。だが、「共通コア州スタンダーズ」に適応した各学校の取り組みが校長の強いリーダーシップに依存している場合、その継続性や発展性は同じ志を持つ他校とのネットワークがあるかどうかにかかっていること、民間組織の教育支援機能が全ての公立学校を支援できるかという規模の問題を指摘することができる。
著者
上田 勝江 ウエダ カツエ Ueda Katsue
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.63-79, 2013-03-31

本稿では、専門学校生の入学、学び、進路決定の3 時点に注目し、彼らのキャリア意識の分析を通して、専門学校の社会的機能の検討を行った。インタビュー調査結果からは、次のようなことがわかった。まず、入学動機としては、自己表出型、止まり木型、職業資格活用型、教育資格活用型の4 種類に分類できた。専門学校経由の大学編入に魅せられて入学する者もいた。次に専門学校生の学びプロセスは、もがき型、知識吸収型、全人発達型、異邦人型に分類できるが、全人発達型が多数であった。専門学校生は、知識習得を行って職業資格を獲得することのみに邁進するのではなく、学校生活の中で、他の学生との交流、実習、教員との交流の中で、自己覚醒していくパターンが多かった。専門学校経由の大学編入生は、メリトクラティックな学歴競争に煽られていた。進学者の実学志向と高学歴志向を反映して、専門学校は、職業資格取得と教育資格取得の機能を強化していた。多くの専門学校生は、資格と学歴を取得することにより、よりよい就職先やより威信のある大学に進学することを目標としていた。それは、勉強への挫折感や嫌悪観を克服し、再チャレンジを果たす意味合いを持っていた。