著者
Shoji Kokichi
出版者
清泉女子大学
雑誌
清泉女子大学紀要 (ISSN:05824435)
巻号頁・発行日
no.55, pp.29-48, 2007-12

現代世界に国民国家間の諸関係を中心とする国際社会が存在することは疑いない。しかし、核戦争の危険からテロリズムの脅威へ、国家間および国家内における貧富の格差の複雑化、環境破壊の地球的規模への拡大、人口爆発と少子高齢化の錯綜など、今日の人類が直面している重要問題の多くが国際社会の枠組内での解決の可能性を超えてしまっており、それを超える新しい社会の出現を把握するための新しい概念が必要とされている。それを世界社会と呼石ことも可能であるが、米ソ冷戦が終結して「二つの世界」および「第三世界」の意義が縮小し、地球環境問題が最大の問題となってきている今、地球社会の概念こそが必要である。地球社会の概念は、社会を共同性、階層性、システム性、および生態系内在性の相克と重層化としてとらえる視点から、共同性と階層性の相克の、宗教、国家、市場、都市による一次システム化、すなわち帝国を超えて普及してきた二次システム化、すなわち政教分離と民主主義と科学技術にもとづく市民社会(市場的都市的社会)の地球的規模への拡大の過程と結果としてとらえることができる。現状では、その共同性はあまりにも弱く、その階層性はあまりにも険しく複雑に見えるが、それは地球社会としてのシステム化かあまりに不十分であるからであり、そういう状態のまま地球環境の危機という生態系内在性の厳しさを露呈しているのが、地球社会の現実である。その危機的状況を打開するために、市民の立場からする、言語問題に配慮した地球的情報化の積極的活用、国際組織の限界と「帝国」的世界システムの批判、イデオロギーから宗教への「改心」を克服する新たな主体的意識の高揚、およびNGOsやNPOsなどによる積極的な対抗地球社会形成が必要である。世界経済会議に対抗してくり返されてきた世界社会フォーラムのような活動が、今後ますます能動的に展開されていかなければならない。