著者
八木 嵩大 宇都 雅輝 Shudai YAGI Masaki UTO
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18810225)
巻号頁・発行日
vol.J102-D, no.10, pp.708-720, 2019-10-01

近年,受験者の実践的かつ高次な能力を測定する手法の一つとしてパフォーマンス評価が注目されている.しかし,パフォーマンス評価では,得られる能力測定値が評価者の特性に依存する問題が指摘されてきた.この問題を解決する手法の一つとして,評価者特性を考慮して受験者の能力を推定できる項目反応モデルが多数提案され,その有効性が示されている.他方で,これらのモデルは測定対象の能力に一次元性を仮定する.しかし,高次な能力の測定を目指すパフォーマンス評価では,複数の能力尺度で構成されるルーブリックを用いて採点を行うことが一般的であり,この場合には能力の一次元性は必ずしも満たされない.そこで,本論文では,評価者特性を考慮した多次元性項目反応モデルを提案する.提案モデルは,データから推定した最適な次元数の能力尺度上で,評価者特性を考慮した高精度な能力測定を実現できる.本論文では,提案モデルのパラメータ推定手法としてマルコフ連鎖モンテカルロ法に基づく手法を提案し,シミュレーション実験と実データ適用を通して提案モデルの有効性を示す