- 著者
-
宇都 雅輝
- 出版者
- The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
- 巻号頁・発行日
- vol.J101-D, no.6, pp.895-908, 2018-06-01
近年,受験者の実践的かつ高次の能力を測定する手法の一つとしてパフォーマンス評価が注目されている.一方で,パフォーマンス評価の問題として,能力測定の精度が評価者とパフォーマンス課題の特性に強く依存する点が指摘されてきた.この問題を解決する手法として,近年,評価者と課題の特性を表すパラメータを付与した項目反応モデルが多数提案され,その有効性が示されている.他方,現実の評価場面では,複数回の異なるパフォーマンステストの結果を比較するニーズがしばしば生じる.このような場合に項目反応モデルを適用するためには,個々のテスト結果から推定されるモデルパラメータを同一尺度上に位置付ける「等化」が必要となる.一般に,パフォーマンステストの等化を行うためには,テスト間で課題と評価者の一部が共通するように個々のテストを設計する必要がある.このとき,等化の精度は,共通課題や共通評価者の数,各テストにおける受験者の能力特性分布,受験者数・評価者数・課題数などの様々な条件に依存すると考えられる.しかし,これまで,これらの要因が等化精度に与える影響は明らかにされておらず,テストをどのように設計すれば高精度な等化が可能となるかは示されてこなかった.そこで本研究では,項目反応モデルをパフォーマンス評価に適用して等化を行う場合に,その精度に影響を与える要因を実験により明らかにし,その結果に基づき,高い等化精度を達成するために必要なテストのデザインについて基準を示す.