著者
Sri HIDAYATI 石原 和弘 井口 正人
出版者
The Volcanological Society of Japan
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.289-309, 2007-12-28 (Released:2017-03-20)
参考文献数
41
被引用文献数
11

山頂噴火活動が低下し,姶良カルデラの地盤が膨張に転じた1993年以降,桜島とその周辺では火山構造性地震の発生頻度が漸次高まった.2003年11月からは桜島南西沖の6〜9kmの深さで地震が多発し,従来ほとんど発生が認められなかった姶良カルデラ北東部でも地震が発生した.翌年末にはGPSによりカルデラの地盤の膨張が観測されたが桜島の噴火活動に顕著な変化はこれまでのところ認められていない.1998~2005年に発生した火山構造性地震の震源と発震機構を求め,火山活動およびマグマ供給系との関係を検討した.(1)桜島およびその周辺の火山構造性地震の震源は姶良カルデラから桜島を通ってその南西側にかけて分布し,これらは,桜島南岳直下の深さ0〜4km,南西沖深さ6〜9kmおよび姶良カルデラ内深さ4〜14kmの3つの領域に分けられる.南岳下の深さ2kmまでの発震機構は逆断層型が卓越するが,2kmより深い部分では横ずれ型が卓越する.(2)桜島南西沖の火山構造性地震は張力軸が西北西-東南東方向の正断層型であり,(3)姶良カルデラ内の火山構造性地震の節面の方向は構造線の方向に〜致しており,いずれもこの地域のテクトニクス場と調和的である.(4)桜島南西沖の地震活動が姶良カルデラから桜島を横切るマグマの貫入イベントに関連しているのではないかという仮説にたって,地殻変動データを吟味してその可能性を検討するとともに,新たなマグマ供給系モデルを提示した.