- 著者
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李 善愛
Sun Ae II
- 雑誌
- 宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.1, pp.17-31, 2005-03-22
韓国では海藻の利用は多いが、とくにワカメは日常の食料だけでなく、近代医学が発達した今日においても命の尊さを司るため行われる儀礼の供え物として用いられている。また、安価の養殖ワカメが大量生産されているにもかかわらず、天然であることで高級贈答品としての社会・文化的価値を生み、経済的価値の高い商品として用いられている。同時に韓国ではワカメが採取できる藻場(岩)は土地と同じく不動産としての価値が付けられている。そのため、ワカメ漁場の所有・利用形態は村ごとに異なり、複雑であるが、ワカメ漁場の所有形態はほとんど共有であり、その利用形態は村民か漁村契員がくじ引きをし、共同で生産・分配するか個人で生産・所有するものとして特徴づけることができる。これはワカメに対する社会・経済・文化的価値が、独特のワカメ漁場の所有・利用形態を作り出していると思われる。なお、漁場面積は減り、漁業者数は毎年減少しているにもかかわらず、ワカメ漁場利用が綿々と続いているのは、ワカメ漁を行う村の生業形態が専業ではなく半農半漁であることと、ほとんどが海女によってワカメ漁が行われていることを明らかにした。