著者
李 善愛 Sun Ae II
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.35-52, 2007-03-20

本研究は、村人が鯨とのかかわりを持って培ってきた地域文化に焦点を当てる。そして、村人の最後の捕鯨砲手や鯨肉専門店を営む韓国唯一の鯨解体士、3代目の鯨肉専門店経営者、鯨祭推進委員、漁業管理船船長とのインタビュー内容に基づき、1986年捕鯨モラトリウム前後における国際政治や社会変化の中、鯨とのかかわりを持ちながら築き上げていく地域文化の生成過程を明らかにする。
著者
李 善愛 Sun Ae II
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.175-196, 2000-03-21

韓国政府は10年余り前まで、「子供は男の子、女の子区別なく二人だけ産んでよく育てよう」という二人子政策を国民に勧めてきた。そして、今は子供は二人のみ産むのが常識となっており、兄弟が5女1男、6女1男などのように多いと珍しく思われている。これは子たくさん儲かるのを望んだの結果であろうが、多くは家を継ぐ男の子を産むため、肉体的、精神的、経済的負担をかかえながら子供を産み続けた結果であると思われる。韓国人の男児への選り好み度が高いのは、胎児の産み分けを手助けして検挙された医者の記事が毎年、マスコミを通して世間を騒がせることから十分裏付けることができよう。本稿では、男児信仰にまつわる韓国のお産文化を通して今昔における生命観の変化についてうかがうことにする。
著者
李 善愛 Sun Ae II
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-31, 2005-03-22

韓国では海藻の利用は多いが、とくにワカメは日常の食料だけでなく、近代医学が発達した今日においても命の尊さを司るため行われる儀礼の供え物として用いられている。また、安価の養殖ワカメが大量生産されているにもかかわらず、天然であることで高級贈答品としての社会・文化的価値を生み、経済的価値の高い商品として用いられている。同時に韓国ではワカメが採取できる藻場(岩)は土地と同じく不動産としての価値が付けられている。そのため、ワカメ漁場の所有・利用形態は村ごとに異なり、複雑であるが、ワカメ漁場の所有形態はほとんど共有であり、その利用形態は村民か漁村契員がくじ引きをし、共同で生産・分配するか個人で生産・所有するものとして特徴づけることができる。これはワカメに対する社会・経済・文化的価値が、独特のワカメ漁場の所有・利用形態を作り出していると思われる。なお、漁場面積は減り、漁業者数は毎年減少しているにもかかわらず、ワカメ漁場利用が綿々と続いているのは、ワカメ漁を行う村の生業形態が専業ではなく半農半漁であることと、ほとんどが海女によってワカメ漁が行われていることを明らかにした。