著者
武田 京子 大村 佳奈 TAKEDA Kyoko OOMURA Kana
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.8, pp.99-105, 2009

出生後間もない子どもにも、絵本を与えようとする、保護者たちが増えてきている。1960年代のブルーナによる「うさこちゃん(現在はミッフィ)シリーズ」が日本に紹介されてからであり、その後、日本の作家による乳幼児向けの絵本が作られ、「赤ちゃん絵本」のジャンルが確立し、さらに、月刊乳幼児向け絵本も刊行されている。これらの絵本を子どもに与える保護者のほとんどは、「読書活動のスタート」として位置付けており、読書の目的を「知識を習得」「内容の理解」におき、読書時間の長さや読書量(冊数)の多寡を気にしている。 日本におけるブックスタート運動が開始され、全国に広まり定着しつつあるが、現在、ブックスタート運動の本来の目的とは異なった方向に進んでいるのではないか、という疑問が、保護者の発言の中から感じ取られる。同様に、マスコミでも有名大学に合格した親子調査の結果では、幼いころに1万冊の絵本を読んだことが読み書きの習得につながった、と絵本の読み聞かせをすることが大学合格-のスタートであるかのような取り上げられ方がされている。そこで、本来のブックスタートが、どのような経緯で始まり、なぜ日本にも取り入れられてきたのかを振り返り、岩手県で最初に実施した花巻市と類似事業を行っている盛岡市のブックスタート運動の実態を検証しながら、今後の子育てへの活用の仕方について考える。