著者
徳永 淳 TOKUNAGA Atsushi
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.31, pp.20-31, 2021-03-18

昭和四十二(一九六七)年に発表された野坂昭如「子供は神の子」は、その表題を反転させた内容の小説である。妹の葬斂で大人たちからの賞讃を享受した小学校二年生の冽は、その晴れがましさを再度味わいたいがために「祖母」を死に至らしめる。しかし、大人たちは冽が「祖母」を死に至らしめたことなど知る由もなく、再び彼を優遇する。 本作は、子供を純粋無垢な存在として扱う大人たちを批判していると捉えられてきた。しかし、その批判もまた大人たちを主眼に置き、冽の内面に焦点をあてていない。 本稿では、大人たちの誤認を指摘した上で、冽の内面も分析し、「子供は神の子」を捉え直していこうと思う。