著者
越田 稜 Takashi Koshida
出版者
学習院大学東洋文化研究所
雑誌
調査研究報告 (ISSN:09196536)
巻号頁・発行日
no.34, pp.47-69, 1992-09

この小論のいわば「はじめに」にあたる部分に,以下論述の概要を記しておきたい。 大戦後の日韓政治文化摩擦の一要因として,日韓の教育,とりわけ歴史教育のあり方は比較的大きな位置を占めるものと考えられる。いうまでもなく,政治と教育との関わりは,為政権力層にとっても,また一般市民にとっても,たとえ教育の政治的中立という一種の教育的識見なるものが存在しても,両者の深い関わりは無視することができない。その点の概観を試みつつ,日韓の戦後教育事1青に触れ,相互の特に歴史教育及びその展開過程である歴史教科書問題について点描する。 日韓両国間に横たわる政治文化摩擦の因果関係に,この教科書問題が大きな要因を占めると考えられるので,小論においては,歴史教科書の双方の記述比較と歴史教育の在り方の究明に紙幅が多くさかれることになろう。 さらにこれらを補う意味で,近代日本の対韓イメージの推移を追いながら,日本の近現代史教育に与えた影響を探ってみたい。 そして最後に,日韓の歴史認識の改めの予兆を叙し,日韓近現代史教育の意義性の一端に触れるつもりである。