- 著者
-
Philip D. ROUND
Andrew J. PIERCE
Takema SAITOH
Yoshimitsu SHIGETA
- 出版者
- 日本鳥類標識協会
- 雑誌
- 日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.1, pp.9-21, 2016 (Released:2016-10-05)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
-
3
いくつかのムシクイ属Phylloscopusの種の非繁殖期の分布域があまり分かっていないのは,野外における種同定が難しいことがその一因である.私達は,オオムシクイPhylloscopus examinandus 5個体とエゾムシクイP. borealoides 12個体に基づく新たな記録を確認し,タイの鳥類相に加えることができた.すべてのオオムシクイの個体は,北方への春の渡り時期において捕獲・標識され,エゾムシクイの記録は,秋と春の両方の渡り時期であった.それらの種の同定は,ミトコンドリアDNA内のチトクロームcオキシダーゼサブユニットI(COI)遺伝子(約700塩基対)を用いて,確立された分析方法によって行われた.さらに,これらの種の計測データと共に,両種の姉妹種である,コムシクイP. borealisとアムールムシクイP. tenellipesの計測値についても示した.このことから,オオムシクイとエゾムシクイの両種が主に,スンダ亜区で越冬していることが明らかとなった.