- 著者
-
Takuya Tashiro
Kenji Mori
- 出版者
- FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
- 雑誌
- Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.128, pp.280-295, 2010 (Released:2011-01-04)
- 参考文献数
- 101
- 被引用文献数
-
4
18
ナチュラルキラー (NK) T細胞は、自然免疫と獲得免疫の橋渡し役を担っており、感染防御ならびに免疫抑制反応の双方において重要な役割を果たしている免疫細胞である。NKT細胞による免疫反応は、糖脂質と、免疫系における抗原提示蛋白質の一種であるCD1dとの複合体を、T細胞受容体を用いて認識することにより誘導される。キリンビール(株)により1995年に開発されたKRN7000は、特異なα-ガラクトシルセラミド構造を有し、NKT細胞を強力に活性化して多量のサイトカイン産生を誘導するため、NKT細胞研究における標準試薬として使われている。当初、KRN7000は抗腫瘍活性剤として開発されたが、免疫賦活活性を誘導するヘルパーT(Th)1型サイトカインを産生誘導すると同時に、免疫抑制活性を誘導するTh2型のサイトカインも同時かつ大量に産生誘導してしまうため、治療薬としての適用疾患は制限されているのが現状である。KRN7000の開発が報告されてから今年で15年が経過したが、KRN7000よりも効率よくNKT細胞を活性化する新規医薬品候補化合物の開発研究が世界中で続けられている。さらには、NKT細胞が糖脂質をどのように認識し、サイトカインの産生を行っているのかを解明しようとする研究も盛んに行われている。以下、NKT細胞を効率的に活性化する新規糖脂質の構造活性相関研究について概説する。