著者
Francis X. Crum Timothy J. Dunkerton
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.11-18, 1994-02-25 (Released:2009-09-15)
参考文献数
23
被引用文献数
6 6

赤道ベータ面の多層モデルを用いて、CISKと蒸発-風フィードバックによって発現する不安定なケルビン波への条件付き加熱の影響を調べた。今までの解析的な結果と同様に、(条件付きでない)線型的な加熱の場合に(無限小のスケールが卓越する)スケール選択が破綻する問題は、条件付き加熱によって緩和されるものの解消はされない。条件付き加熱の上昇流域は一つであり、その水平スケールは粘性やモデルの解像度によって決まる最小のスケールになる。この傾向はCISKによる不安定な場合にもっとも顕著である。蒸発-風フィードバックによってケルビン波の不安定はCISKと無関係に起こる。この場合、増幅率は粘性が小さくなるにつれゆるやかに大きくなるが、水平スケールはやはり小さくなる。今までは東風が必要と考えられていた東進する蒸発-風フィードバック不安定モードが、一般風のない場合にもあらわれるのが示された。スケール選択に関しては蒸発-風フィードバックの方がCISKよりも良い。しかし、(1)水蒸気収束フィードバックの強さを決めるパラメータqがCISK中立点に近い値を持ち、(2)蒸発-風フィードバックの強さを決めるパラメータAが小さく、(3)加熱分布は鉛直流に比例する場合以外には、東西方向の位相速度は熱帯季節内振動やスーパークラスダーのものに比べて非常に大きい。こうした三つの条件を満たす場合には、2層モデルで小さな正の位相速度が得られる。